環境基準

 国や地方公共団体が公害防止対策を進めるには、環境の質がどの程度のレベルに維持されることが望ましいという目標が必要です。この目標が環境基準と呼ばれるもので、環境基本法によって、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音について定めることとされています。水質汚濁に係る環境基準は平成11年に改正され、人の健康の保護に関しては27項目、生活環境の保全に関しては河川、湖沼、海域のそれぞれについて水域類型別に計9項目の基準が定められています。
 また、水生生物保全環境基準は平成25年3月27日付け環境省告示により改正され、3項目(全亜鉛、ノニルフェノール、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(LAS))の基準が定められていますが、水生生物保全に係る類型指定は現在進められています。

生活環境項目

 水質汚濁に係る環境基準のうち、生活環境の保全に関する環境基準で指定されている項目で、最も基本的な水質項目です。
 (pH、DO、BOD、COD、SS、大腸菌群、ノルマルヘキサン抽出物質の計7項目。湖では総窒素、総リンも含む。)


健康項目

 人の健康の保護に関する環境基準で指定されている項目で、水質汚濁の中でも特に有害性の強いもので、規制値も非常に厳しく、現在、以下の27項目が定められています。

カドミウム PCB 1,1,2-トリクロロエタン ベンゼン
全シアン ジクロロメタン トリクロロエチレン セレン
四塩化炭素 テトラクロロエチレン 硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素
六価クロム 1,2- ジクロロエタン 1,3-ジクロロプロペン ふっ素
砒素 1,1-ジクロロエチレン チラウム ほう素
総水銀 シス-1,2-ジクロロエチレン シマジン  1,4-ジオキサン
アルキル水銀 1,1,1-トリクロロエタン チオベンカルブ  


要監視項目

 平成5年に環境基準項目の追加及び基準価値の強化等が行われましたが、その時に、健康の保護に関連はあるが公共用水域における検出状況からみて、現時点では環境基準項目とはせず、引き続きデータの収集に努めるべきと判断されるものについて要監視項目という枠組が新たに設けられました。要監視項目の多くは、公共用水域における検出濃度が低く、直ちに対策を講じる必要がないと判断される物質です。
 現在、物質はクロロホルム(揮発性有機塩素化合物)、オキシン銅(農薬)、ニッケル等26項目が定められており、指針値で評価されています。
 なお、指針値とは、測定結果を評価するうえで定めているもので、長期間摂取に伴う健康影響を考慮して算定された値であり、一時的にある程度この値を超えるようなことがあっても直ちに健康上の問題に結びつくものではありません。


mg/L(ミリグラム/リットル)

 汚染物質の濃度を示すのに用いる単位で、1mg/Lとは水1リットル(1,000g)に対し物質1mg(1/1,000g)を含む場合をいい、百万分の1であることを示します。水の比重が1の場合は「ppm」で表すこともあります。


透視度

 透視度は、水の中に含まれる浮遊物質やコロイド性物質などによる濁りの程度を示す指標で、透視度計とよばれる下部に流出管のついたメスシリンダーに水を入れ、底部の白色円板に引かれた二重十字が識別できる限界の水の厚さをcmとして表したものです。


pH(水素イオン濃度)

 水の酸性・アルカリ性を示すものでpHが7のときは中性、これより数値の高い場合はアルカリ性、低い場合は酸性であることを示します。pHの急激な変化は有害物質の混入などの異常があったことを示します。


DO(溶存酸素)

 水中に溶解している酸素量を言い、有機物による汚染の著しいほど低い濃度を示します。一般に魚介類の生存には5mg/L以上の溶存酸素が必要とされています。


BOD(生物化学的酸素要求量)

 水中にある有機物をバクテリアが分解するのに必要な酸素の量をいい、この値により水中にある生物化学的な分解を受ける有機物の量を示します。BODは最も広く使われている汚濁の指標です。


COD(化学的酸素要求量)

 水中にある酸化されやすい物質によって消費される酸素量をいい、BODが水中の生物活動によって消費される酸素量をいうのに対して、CODは純粋に化学的に消費される酸素量です。この値は水中の有機物量を表わすものと考えられています。水質汚濁に係る環境基準ではBODが河川の基準値であるのに対してCODは湖沼、海域に対して適用されています。


75%値

環境基準は公共用水域が通常の状態(河川にあっては低水流量以上の流量)のもとにあるときに測定することになっていますが、低水流量の把握は非常に困難であるため、BODやCODについては測定された年間データのうち75%以上のデータが基準値を満足することとされています。
 例えば月1回の測定データがある場合、水質の良いものから1年間分12個を並べた時、水質の良い方から9番目の値が75%値であり、この値が環境基準を満足していれば、当該測定地点において環境基準値に適合しているとみなすこととされています。


SS(浮遊物質または懸濁物質)

 水中に懸濁している不溶解性の粒子状物質のことで、粘土鉱物に由来する微粒子や、動植物プランクトン及びその死骸、下水・工場排水などに由来する有機物や金属の沈殿などが含まれます。
 通常の河川のSSは25〜100mg/L以下ですが、降雨後の濁水の流出時には数百mg/L以上になることもあります


大腸菌群数

 大腸菌群とは、大腸菌及び大腸菌ときわめてよく似た性質を持つ細菌の総称です。大腸菌群は、多少の例外はありますが、一般に人畜の腸管内に常時生息し、健康な人間の糞便1g中に10億〜100億存在するといわれています。そのため、微量のし尿によって水が汚染されてもきわめて鋭敏に大腸菌群が検出され、また、その数に変動をきたします。大腸菌群の検出は容易かつ確実なので、し尿汚染の指標として広く用いられています
 大腸菌群自身は、普通病原性はなく、また糞便性でない大腸菌群が検出されたからといって直ちにその水が危険であるとはいえませんしかし、大腸菌群が多数検出されることは、その水はし尿による汚染を受けた可能性が高く、したがって赤痢菌やサルモネラ菌などの病原性細菌によって汚染されている危険があるということを示すものです。
 


総窒素

 水中の窒素の総量で窒素ガス(N2)として溶存している窒素は含まれていません。富栄養化の指標としては、総窒素がもっともよく使われ、富栄養と貧栄養の限界値は0.15〜0.20mg/L程度とされています。


総リン

 水中のすべてのリン化合物を定量したもので、富栄養化の目安としては、0.02mg/L程度とされています。


クロロフィルa

 クロロフィル(葉緑素)は、クロロフィルa、b、c及びバクテリオクロロフィルに分類されますが、このうちクロロフィルaは光合成細菌を除くすべての緑色植物に含まれるもので、藻類の存在量の指標となります。


砒素

 金属砒素及びその化合物は、半導体の材料、合金添加、農薬、殺鼠剤、皮革や木材の防腐剤、衣料品の原料、色素製造、ガラス工芸の分野に広く用いられている。砒素の多くは硫化物として、銅、鉛、亜鉛、鉄等の金属と一緒に産出することが多い。
 環境中の砒素は、火山性温泉や鉱山廃水、精錬廃水に由来して多量に含まれることもあり、また染料、製革、塗料等の工場からの廃水や農薬などによる汚染も砒素高濃度の原因となることが多い。しかし、こうした特別の発生源のないところでも微量ながら広範囲に分布している物質である。
(出典:日本水道協会「上水試験方法解説 1993」)


 鉄管、板、蓄電池、電線被覆などの重化学的利用から、ハンダ、活字ゴムの硬化剤、防錆材料、マッチ、爆薬の原料などに用いられている。
 鉛は、河川水中には地質、工業排水、鉱山廃水に由来して溶存することがある。また、種々の工業製品に添加物、不純物として含まれているため、環境中に広く分布している。
 鉛による健康被害の標的組織は末梢の神経組織と腎臓であり、種々の症状がある。
 (出典:日本水道協会「上水試験方法解説 1993」)


アンチモン

 銀白色の金属光沢を有する結晶で、自然界には金属、酸化物、硫化物として存在し、人体にとっては、有害な金属で、体内に蓄積されやすく中毒を起こす。影響は皮膚炎、結膜炎、気管支炎、肺炎、心臓障害等が知られています。
 自然水中濃度は0.001mg/L以下。鉱山排水や工場排水に含まれることがある。


流量用語

 豊水・平水・低水・渇水流量とは、一年を通じての日流量を大きい順に並べ替えて、それぞれ次のようになる流量をいいます。公表の速報で用いた低水流量と年平均流量とは、観測開始からの各年の低水流量及び年平均流量を平均した値です。
豊水流量 : 一年を通じて 95日はこれを下らない流量
平水流量 : 一年を通じて185日はこれを下らない流量
低水流量 : 一年を通じて275日はこれを下らない流量
渇水流量 : 一年を通じて355日はこれを下らない流量
年平均流量 : 日流量の一年の総計を当年日数で除した流量


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