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失われゆく白砂清松
 北陸地方建設局管内の直轄海岸は、北から新潟海岸、下新川海岸、石川海岸があります。これらの海岸線は、それぞれ信濃川と阿賀野川、黒部川、梯川と手取川をはじめとする大小の河川が運ぶ土砂によって形作られてきたものですが、近年、いずれも激しく侵食されてきています。
 新潟海岸は、これまで北陸を代表する二大河川から運ばれる大量の土砂によって、海岸線を前進させ、日本でも有数の新潟砂丘を発達させてきました。しかし、近年では、治水事業の進捗にともなう土砂補給の減少に地盤沈下も重なって、堆積性の海岸から侵食性の海岸に変貌してきました。昭和22年以降、最大360mにも及ぶ海岸線の後退が見られます。この一帯は、新潟市郊外の住宅地として、海岸線近くまで宅地開発が進んできていることから、侵食対策が急務となっています。その一方で、明治以降に新たに開削された大河津分水路の河口に広がる寺泊海岸では、信濃川の洪水が運んだ土砂が堆積し、海岸線の前進が見られます。
 富山県の下新川海岸は黒部川と小川が形成してきた複合扇状地です。この海岸は古くから越波や海岸侵食が著しく、黒部川河口の東に位置する入善町吉原、朝日町赤川などの地区では多くの家屋が移転を余儀なくされました。江戸時代から現在までの汀線の後退は120〜250mにも及ぶといわれています。下新川海岸の侵食は、扇状地砂礫の堆積、急な海底地形、大きな波浪の来襲など、気象や地形条件に由来するものであるため、その意味では宿命的なものと言えますが、近年、河川からの流出土砂が減少したことも、これをいっそう著しいものとしています。
 手取川の扇状地に連なる石川海岸も侵食の歴史は古く、享保13年から現在までの200年以上の間に約470mも侵食されています。
 直轄海岸では、海岸線の侵食と波浪による被害を防ぐため、海岸堤防の補強や緩傾斜堤や離岸堤の施工などを実施してきていますが、このように、河川が運ぶ土砂の影響は、海岸線にも及んでいます。