月日は流れ、正直者のおじいさん、おばあさんにあずけられた竜神の子“小太郎(こたろう)”は、すくすくと成長し、ひましに立派になっていきました。
 母親の犀竜(さいりゅう)は、そんな小太郎と幸せそうなおじいさん、おばあさんの姿を遠くのほうからちらりと見るたびに「ああ、この体ではあの子と会うこともできない」と悲しみ、人間でない自分の姿をうらめしく思うあまり、おじいさんとおばあさんが憎らしくなってきて、あの二人さえいなければ…と考えるようになってしまいました。
 おじいさんとおばあさんは、昔から湖の魚をとって、ひっそりと暮らしを立てていました。ところが、このごろ一匹の魚も網にかからなくなってしまいました。
 「おかしなことだなぁ」と、今度は場所をかえてみましたが、やはり小さな魚一匹かかりません。

 しかたがないので、おじいさんとおばあさんは、木の実や草の根っこを掘って食べることにしましたが、小太郎には「たくさん食べなさい」とむりやり食べさせて、二人は水ばかり飲んでいました。

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