すがすがしい上高地で、梅雨の話題を。

  6月といえば、梅雨。沖縄県や、九州地方から「土砂災害」のニュースが飛び込んできています。
というわけで、実は、6月は「土砂災害防止月間」なのです。

 「砂防」ってご存じでしょうか?

 人知れず、山奥で行われているのでほとんど目にすることはありせんが、地滑りや土石流などの
「土砂災害」を防ぐ、大切な仕事です。長崎県の「雲仙普賢岳」の噴火で有名になった「火砕流」な
どの火山災害を防ぐのも砂防の仕事です。

 そこで、松本砂防事務所では、毎年6月の第2土曜日に、「上高地SABOフェスティバル」を開催
し、土砂災害の怖さと、それを防ぐための砂防事業、そして、上高地の自然環境を守る砂防事業を
紹介しています。

 今回は、今年度、実施された「上高地SABOフェスティバル」の模様を紹介いたします。

                    とき 平成18年6月10日(土)

                  場所 安曇上高地小梨平キャンプ場にて

今年のゲストはさとう宗幸氏(中央)。
 今井事務所長(さとう氏の隣の黄
色いジャンパー)の説明に、熱心に
耳を傾けておられました。

上高地の砂防事業 〜マイナス25℃での作業〜

 上高地は長野県内で、指折りの観光地です。しかし、活火山である焼岳を初め、周囲の山々から
はたくさんの土砂が流出しており、放っておけば大正池などは数年のうちになくなってしまうでしょう

 上高地の砂防事業はこのような自然環境を守るために行っています。
 そのため、上高地の砂防事業では、次のような配慮をしています。
 @梓川を人工的にまっすぐにしないで、自然の蛇行をそのままにして、見た目の美しさを保つこと
  。

 A見た目の美しさを壊さないように、帯工など砂防施設は、現地の玉石を使って隠す。
   上高地を訪れた際には、明神橋周辺に帯工というコンクリート構造物があるので探してみて
  ください。決して見つからないでしょう。そして、自然の川の曲がりも損なわれていないことが
  ご理解いただけると思います。
 
 B工事は、観光客のいない時期(=冬)に行う。
   上高地は冬は氷点下25度にもなります。バナナで釘が打てる世界です。気候のよい時期
  に工事をしたいのは山々ですが、それでは上高地が台無しです。
  このような厳しい環境で工事をする業者さん(と、私たち)の努力で、上高地の自然が守られ
  ているということを、頭の片隅においていただけると幸いです。

砂防堰堤の役割

 砂防施設の代表選手はなんと言っても「砂防堰堤」(一般的には「砂防ダム」)。模型を使っての
砂防堰堤の役割の紹介は、このイベントの定番です。

 右側の砂防堰堤がない河川では、土砂災害が起こっています。
 左側の、砂防堰堤が整備された河川では、土砂が食い止められています。
 では、写真のように埋まってしまった砂防堰堤はどうなるのでしょうか?
 実は、ちゃんと土砂を食い止めることができます。砂防堰堤は、埋まることによって、川の傾斜を緩くし、土砂の勢いを弱め、また、左右の岸が崩れてくるのも防ぎます。
 こうして、砂防堰堤は、人知れず山の奥で、土砂を食い止めているのです。
 また、各地の監視カメラがとらえた実際の土石流の映像もごらんいただきました。
 実際の被害の映像ではありませんが、乗用車よりもずっと大きい岩が押し流されていく映像には恐ろしさを覚えます。

地震体験と降雨体験
 今年は、地震と降雨の体験もしていただきました。
 一般に土砂災害が発生する危険があるといわれている1時間あた
り20_の雨から、1時間あたり120_の雨までを体験していただきました。

1時間に20_くらいの雨だと、笑顔もこぼれます。しかし、単純に言って、空っぽのプールに1時間で2aの水がたまるということです。山間地域に住んでいる方は注意が必要です。
 1時間に120_の雨だと、さすがに悲鳴が上がりました。実際に降ったとしたら、ワイパーも効かないので車なんか運転することはできません。
 震度3くらいなら、まだ余裕の笑顔です。
 しかし、新潟県中越地震(震度7)では、地震の揺れで30dの機械が宙に浮いたそうです。
 日頃からの備えが大切です。
 「フェスティバル」というからには、
 お役人のお役人による説明だけ
 では、盛り上がりません。昨年は
 イルカさん(←水族館にいる、か
 わいい海棲ほ乳動物のことでは
 ありません。念のため)、今年は、
 さとう宗幸さんをお迎えして、コン
 サートを開催しました。今年は、
 天候にも恵まれ、すがすがしい緑
 に、さわやかな歌声が響きました。