フクジュソウやカタクリ、ニリンソウなどがうつくしい花を咲かせる白馬村佐野坂の姫川源流地帯。ちょっと川の中をのぞいてみてごらん。モのように細い糸状の葉をゆったりと下流になびかせているバイカモが見つかるはずだ。バイカモといってモじゃないよ。平地から低山地帯の上部まで、水がわき出る所やきれいな水が流れる水路、小川などの水底にはえるキンポウゲ科の植物。夏には中心が黄色みがかった白い花を水面上に咲かせる。水分は根だけではなく、体のあらゆる部分からとることができるようになっている。
 学名はランヌキュルス・アクアチリス。アクアチリスは「水中の」という意味。ランヌキュルスは「カエルがたくさん住んでいる場所に生える」という意味があるそうだ。
 バイカモのように体が水中に完全に沈んでいる植物を「沈水植物」っていうんだ。川の流れにさからわないように葉や茎がほそ長くなっているのが特徴だね。
 姫川の源流地帯のように冷たいわき水の出ている場所はいちねんをとおして水温がだいたい一定しているし、水量や水質も安定しているため、このような沈水植物の群落が発達しやすいんだ。
 バイカモは北海道と本州に分布する日本だけの品種。以前は人家近くの小川にもたくさん生えていたんだけれど、今はあまり見られなくなってしまった。原因はずばり川の水のよごれ。きれいな水でしか育たないバイカモの悲鳴が聞こえてきそうだ。
水辺の植物たちは環境に合わせて
生きる工夫をしているよ。
●沈水植物
バイカモの他にマツモ、エビモ、セキショウモなどがあげられる。中でもセキショウモは雄株と雌株があって、それぞれの株についた雄花と雌花を水の力を利用して受粉させる。 こういう植物を水媒花っていうんだ。
●浮遊植物
水面をただようウキクサやホテイアオイ。空気をたくわえた葉をうきぶくろにしたり、水中にたくさんの根をはって、花が咲いてもひっくり返らないように重りの役目をさせているよ。
●浮葉植物
スイレンやトチカガミのように水面に葉を浮かせ、空気をとりいれたり、花を水上で咲かせるんだ。
●抽水植物
葉と茎の一部を水上に出しているレンコンやヨシ。茎や根に穴があいていて、空気をからだ全体に運べるようになっているよ。