北アルプスから流れ出している姫川の支流は、急流の川が多い。そして、たくさんの土砂や石を上流の山から運び出し、扇状地をつくっている。たとえば白馬村の平川もそうなんだ。そこで国道148号線から平川の上流部をながめてみると、手前の方になだらかな斜面が広がっているのに気が付くと思う。それでは、川のまわりがどんな形状になっているのか、飛行機で上空からみてみよう。

 平川が北アルプスの山の間を流れてきて、平地に出た所に扇をひらいたような形の地形をつくっているのがわかる。これが扇状地なのだ。

 もともと扇状地を流れる川は大雨が降るたびに流れをかえながら運んできた土砂を堆積して扇形の地形をつくってきた。つまり扇状地は以前に川が氾濫を起こした場所で、ふたたび氾濫をする可能性があるわけだ。扇状地に行ったら、まず田畑の土地を調べてみよう。小石や砂がおおくふくまれているのがよくわかるはずだ。

 現在、平川ではいつもおなじ所を流れるように、また上流から土砂が流れてこないようにする工事を行い、川が氾濫しないようにしている。だから、安心して別荘地に人が住んだり、田んぼや畑をたがやして米や野菜をつくったりしているんだね。
 姫川の場合、特に白馬盆地の平川、松川、犬川など東側の支流ではっきりとした扇状地が発達しているよ。対岸の小高い山に登って、よく山ぎわの地形を観察してごらん。

扇状地ができるまで

山間部を流れてきた川が平地に出ると、川底のかたむきがゆるくなる。流れはおそくなり、物を運ぶ力が弱くなるため、谷の出口近くに上流から運ばれてきた石や砂がたまる。
石や砂がいっぱいたまると、川は流れがじゃまされるので大雨などによって水量がふえた時に流れの方向を変える。こうして長い時間をかけて平地への出口を中心に扇型の地形が大きく成長していく。
石や砂からできている扇状地は水がしみこみやすく、一部の川の水は地中にもぐって流れ、扇状地の先端からふたたび湧き水として地上に現れる。


●こんな地形も川がかかわっているよ
◆V字谷ができるまで ◆河岸段丘ができるまで
川の上・中流部の流れが速い所では、かなり大きな石もころがっていくし川底がさかんに削られる。
地殻の変動によって地面が持ち上がると、川の流れの強さがまして川底が深く削られるようになり、もとの川原の中に幅のせまい新しい川ができる。そのため、もとの川原は一段高くなる。
川底が深くなるにつれて川岸がくずれる。そして姫川渓谷のように両岸にがけがそそり立つ、川幅のせまい谷川ができている。横断面がアルファベットのVの字に似ているから、V字谷っていうんだよ。
さらに何回か土地が持ち上がると、そのたびにおなじ働きによって川原の中につぎつぎと新しい川ができ、両岸は階段のような地形になる。