今年度の連携排砂実施期間が終了したことから、排砂量及び環境調査結果(速報)をお知らせ致します。
 今年度の排砂実施期間では、6月25日~27日に連携排砂を実施し、出し平ダムの目標排砂量29万m3に対し30万m3の排砂を実施しました。
 また、連携排砂時における環境調査の結果は、河川水質や海域底質の一部の調査項目において過去の観測値の最大(又は最小)値を越えましたが、概ねこれまでの観測値の範囲内でありました。
1.出し平ダム排砂量と宇奈月ダム堆砂量の変化について
出し平ダムは、目標排砂量※129万m3に対し30万m3の排砂を実施しました。この結果は、想定変動範囲※2(約14万m3~約38万m3)に収まる結果となりました。
一方、宇奈月ダムの堆砂量※3は、平成28年5月と同年7月の測量結果を比較すると約20万m3減少したことから宇奈月ダムの堆砂量は736万m3(堆砂率※461%)となりました。
【参考】
連携排砂が始まった平成13年から平成27年までの出し平ダムにおける年間排砂量の平均は約29万m3です。
※1:
目標排砂量は、平成27年排砂直後から平成28年5月までに堆積した土砂量としています。
※2:
想定変動範囲は、上流より流入してくる土砂量を考慮し排砂量の変動範囲を推定したものです。
※3:
堆砂量は宇奈月ダム湖に堆積した土砂量です。
※4:
堆砂率は、計画堆砂量(1200万m3)に対する、堆砂量(736万m3)の進行割合を示すものです。
2.主な環境調査(水質・底質)結果(速報)について
連携排砂の実施に伴い、水質や底質の環境調査を実施した結果、河川の水質では出し平ダム直下のBOD※1、COD※2や宇奈月ダム直下のSS※3、CODの観測平均値などにおいて過去の最大値を上回りました。また、海域の底質ではC点のORP値※4が過去の最小値を下回り、A点の硫化物※5などにおいては過去の最大値を上回りました。これら以外の調査地点における、調査結果については概ね過去の観測値の範囲内でした。
※1:
BODとは、生物化学的酸素要求量(Biochemical Oxygen Demandの略称)で、水中の有機物が微生物により分解するときに消費される酸素の量であり有機物の大小を示すものです。
※2:
CODとは、化学的酸素要求量(Chemical Oxygen Demandの略称)で、水中の有機物などを酸化剤で酸化するときに消費される酸素の量であり有機物の大小を示すものです。
※3:
SSとは、浮遊物質量(Suspended Solidの略称)で、水中に浮遊している物質の量を示すものです。
※4:
ORPとは、酸化還元電位(Oxidation Reduction Potentialの略称)で、土壌中(液)の持つ酸化力(+)又は還元力(-)を示すものです。
※5:
硫化物とは、硫黄と水素、カルシウム又はナトリウム等の化合物で還元性(腐敗性)環境下では大きな値を示すものです。
3.連携排砂時の流量について
今回、それぞれのダムピーク流入量は、出し平ダムで296m3/s、宇奈月ダムでは336m3/sでありましたが、これまで連携排砂を実施した出水の中で、最も少ない流入量から出し平ダムでは3番目、宇奈月ダムでは4番目の規模でした。
なお、この時の累計降雨量は、平野部に近い宇奈月ダムで86mm、山岳部の仙人谷では162mmと全体的にやや少ない雨量でしたが、連携排砂等の実施基準である梅雨時期の出し平ダムの流入量が250m3/sを越えたことから実施に至ったものです。
4.今後の予定について
今回、お知らせさせていただきました主な環境調査結果の考察やダム水位低下速度の抑制等の取組効果については、今後11月まで予定している定期調査結果を踏まえてとりまとめを行い、その後の「黒部川ダム排砂評価委員会」(平成29年1月開催予定)で評価して頂く予定です。
(添付資料)
平成28年6月連携排砂の実施結果について   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 添付資料-1
平成28年6月連携排砂に伴う環境調査結果について(速報)・・・・・・・・・・・・ 添付資料-2
なお、添付資料につきましては、国土交通省黒部河川事務所ホームページ
「宇奈月ダム・排砂関連情報」(http://www.kurobe.go.jp/haisa/haisa.cgi
にも掲載しておりますので、そちらをご覧下さい。
【参考】
宇奈月ダム貯水池内に存在する大粒径土砂の移動の実態を明らかにするため、平成27年に引き続き、今年度も発信器付の石を投入しました。
その結果、今回連携排砂時に湖面橋から投入した石が、宇奈月ダム排砂路を通過し、ダム下流へ移動したことが確認されました。
今後、これらの結果を排砂予測に反映し、浮かび上がる課題を明らかにしたうえで、その解決策を提案することとしています。
また、連携排砂後の排砂路点検において、ライニングプレートのボルト欠陥を確認し、応急的処置の実施や、他のボルトにも欠損の可能性がないか点検をしました。