平成18年1月17日(火)14:00〜17:00
名鉄トヤマホテル 3階「薫風の間」
1.平成17年6、7月連携排砂及び連携通砂の実施経過について
2.平成17年6、7月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果について



評価委員会





第23回黒部川ダム排砂評価委員会における評価
 水質、底質および生物の環境調査の結果から、洪水および連携排砂・通砂により、一時的な環境の変化はあるものの、大きな影響を及ぼしたとは考えられない。
 しかし、今後は両ダム上流から流入する土砂量および流出する土砂量の精度高い把握、排砂・通砂方法の検討、ならびに生物相の他水域も含めた長期的な視点に立った考察が必要である。
 
○実施経過について
詳しくは以下の資料をご覧下さい
資料−1 平成17年6、7月連携排砂及び連携通砂の実施経過について
 
[主な意見]
(委 員)
今年度、宇奈月ダムで大規模な土砂堆積があり、堆砂形状は安定河床高に近づいてきているが、これは計画段階で想定された形状に近づいていると言うことか。
今後安定期に移行することにより、宇奈月ダムからはほぼ一定の土砂が流下していくと理解して良いのか。
(委 員)
宇奈月ダムの堆砂形状については、当初想定されていた形状にかなり近づいており、これからは堆積している土砂の粒径が少し粗めのものに入れ替わっていく過程があると考えられる。
また、出し平ダムと宇奈月ダムを比較すると宇奈月ダムの貯水池の方が大きいことから、貯水池縦断方向だけではなく、横断方向の土砂の堆砂や侵食状況について引き続き見ていく必要がある。
さらに宇奈月ダム貯水池の堆積の進行により、自然流下前の水位低下速度が過去に比べ速くなってきている点についても検討し、排砂計画を作成する必要がある。
 
○環境調査結果について
詳しくは以下の資料をご覧下さい
資料−2−@1/2 平成17年6、7月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果について
資料−2−@2/2 平成17年6、7月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果について
資料−2−A1/2 アユの生息実態及び生息環境調査について
資料−2−A2/2 アユの生息実態及び生息環境調査について
資料−2−B 平成17年6、7月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果データ集
 
[主な意見]
(委 員)
今年度の一連の排砂および2回の通砂で新たに流入、通過した土砂量について、現時点で事務局が把握している範囲で説明されたい。
土砂動態の把握は、排砂及び環境調査の計画を立案する上でも重要であり、今後の検討課題である。
(事務局)
排砂実施機関としても土砂量を把握するための流砂量観測機器の実用化に向けて努力しているところであるが、現状では評価委員会等に説明できるまでの観測精度が確保されていない。
また、連携排砂及び連携通砂中に採水した試料のSSに流量を乗じウオッシュロード及び浮遊砂の一部の概算土砂量を算出しているが、流入土砂量と通過土砂量の整合がとれていないなど精度に課題がある。
(委 員)
流砂量観測の現状は事務局の説明どおりであるが、今回の一連の排砂および通砂で宇奈月ダムに堆積した土砂量は約140万m3であるのに対し、出し平ダムの実績排砂量は約51万m3と少ない。この差分は出水および排砂、通砂中にダム上流域や河道に堆積していた土砂の新たな流入によるものと考えられ、排砂、通砂前後の堆砂測量の差より算出される土砂量だけでは、出水及び排砂、通砂中の土砂収支を説明するのは困難である。
ダム上流域からの流入土砂量を把握するためには、今回、洪水ピーク時の観測が実施できなかった出し平ダム上流の猫又地点での観測が重要となる。
一方、宇奈月ダム直下の観測値を見ると、排砂自然流下前の出水時には、SSが5,500mg/lと濃いものが排出されており、これはダム上流から流入してきたものが沈降せず浮遊した状態で宇奈月ダムを通過したと見ることもできる。
よって、調査できたデータの範囲でもよいので、オーダー的な土砂量を把握できるようになると良いのではないか。
(委員長)
猫又地点では出水ピーク時の観測が出来なかったためSSの最大値は低いが、上流から大量に土砂が流入してきたと考えればもう少し高い値になってもおかしくない。黒薙地点のSS最大値は6,200mg/lでありこの程度であったと想定できる。
今回、猫又地点は出水の影響により作業員の安全性の確保から出水ピーク時の観測が出来なかったが、今後改善方策を検討し、観測できるようにする必要がある。
(委 員)
海域底質調査結果について、富山県水産試験場の測定値(強熱減量)が排砂実施機関の測定値に比べ高いが測定方法に違いはあるのか。
(事務局)
分析方法は同じであるが、採取した試料から試験サンプルを取る方法に違いがある。
排砂実施機関では、採取した試料を十分に攪拌し試験サンプルとするのに対し、水産試験場では採取した試料を攪拌せずに表面部分を試験サンプルとしていることから、測定値に違いがでていると考えている。
来年度は、この試料サンプルの取り方の違いにより分析結果がどの程度変わるのか、水産試験場とクロスチェックを実施したい。
(委員長)
採取した試料から試験サンプルの取り方については、特に定められたものはないが、試験サンプルの取り方としてどちらが良いかということはない。排砂実施機関では過去からのデータを経年的に比較するという観点からは、試験サンプルの取り方を変更することは困難である。
ただし、試験サンプルの取り方の違いによる測定のクロスチェックを実施し、測定結果の妥当性を確認されたい。
(委 員)
一般的に用水路の堆積量については、沈砂池等を通過している箇所では年間数ミリオーダー、よどみや調整池等では数センチオーダーである。
黒部川の場合、愛本堰堤取水後に沈砂池を通過しており、観測値も通常のオーダーであると考える。
(委 員)
下黒部橋地点の魚類の個体数がH16以降低い値となっているが、この理由は何か。
(事務局)
下黒部橋地点で個体数が減少している魚種はサケ、アユ、ウグイである。3種とも放流魚であり、サケ、アユについては放流の影響による採捕個体数の増減が考えられる。ウグイについては放流量が少なく、採捕数に対する放流の影響は小さいと考えられる。
黒部川は急流河川であり、河道の変化が激しく、瀬や淵も変化しているが採捕箇所を経年的に変更しないで実施していることも採捕個体数の減少の要因の一つと考えられる。
また、河道環境が変化すれば採捕される魚種も変化するとも考えられ、採捕個体数についてはもう少し長期的に見ていく必要があると考えている。
(委 員)
魚類の放流量は大きく関係するが、放流量の増減のみが採捕個体数減少の要因ではないと考えている。
採捕個体数の増減については、非常に判断の難しいところであり、過去にも減少した年や回復した年もあることから、短期的な視点から結論を出さない方が良いと考える。
ただ、アユについては昨年度はいずれの河川においても遡上量が少なく、同様に黒部川も減少したと理解できるが、今年度は昨年度に比べ遡上量は回復したと聞いている。また、サケについてはH16、17と減少している訳ではなく、採捕個体数の減少はウグイの減少が大きいと考えられる。
ウグイは、黒部川でも富山県内の他河川でも他の魚種に比べ絶対数が非常に多いが、近年は減少している。
下黒部橋地点での魚類個体数の減少については、河道環境の変化や他の要因なのか実施機関としてしっかりとした分析をしておいた方が良い。
(委 員)
排砂、通砂後の9月調査では海域底生動物への影響が見られるが、11月調査では排砂前の状態まで回復する傾向にある。海域底生動物に対する排砂の影響度を把握するには出水時や排砂・通砂時に海域に流入する土砂量を把握することが重要である。
また、海域底生動物の個体数の長期的な変動を見ると、A点、生地鼻沖で減少傾向にあり、個体数の割合では、ニマイガイ綱が減少し、ゴカイ綱が増加している。
A点は黒部川東部に、生地鼻沖は西部に位置しており、黒部川の影響の度合いを考えるとA点の方が大きいと考えられる。
海域底生動物の個体数減少ならびに種の構成比変化の要因として、黒部川の影響がどのくらいか、また、富山湾全体としての影響がどのくらいかを長期的な視野から見ていく必要がある。
(委員長)
海域底生動物の変化と海域の汚濁との関係はどう解釈すればよいのか。
(委 員)
ニマイガイ綱は砂質を、ゴカイ綱は泥質を好むことから海域底生動物の変化は汚濁ではなく、底質の変化を示しているものと考える。
総合的に環境への影響をとらえているのが生物であり、底質の変化は影響要因の一つである。
(委 員)
富山湾全体の底生動物の調査は単発的に実施しているものはあると思われるが地点数も少ないと考えられ、その場合は連携排砂及び連携通砂に伴う調査結果の比較対象として使用できず、比較結果からの評価が難しい。
排砂実施機関の調査は詳細に行われているが、これまでの調査結果から排砂の影響を判断することは難しいと考えている。
今後、排砂実施機関の調査範囲を拡大することは困難であり、これまでの調査範囲の調査を継続していくことにより排砂による影響がわかってくる可能性もある。
(委 員)
海域底質の変化を確認する方法として、短期的にはセジメントトラップなどで可能であるが、長期的な情報についても必要となってくる。
長期的な情報としては音波探査によって堆積土砂の泥と砂の分布を確認できることから、海域A点とC点を結ぶ測線を何回か観測してみてはどうか。
この観測結果とあわせて底生動物の構成の変化等を見ていくような総合的な評価も必要なのではないかと考える。
(委 員)
H16、17の海域植物プランクトンの構成を見ると過去に比べ構成する種類数が多くなっているが、この変化は何を表しているのか。
(事務局)
植物プランクトンの種類数には変化がないが、グラフ上ではこれまで大部分を占めていた珪藻類が減少し、相対的にその他の藻類の割合が増加したため構成する種類数が多くなったように見えているものである。
(委 員)
セジメントトラップ補足調査を実施した時は、宇奈月ダムは自然流下中であるが、海域にはどのような状態の時のものが流入していたのか。
(事務局)
補足調査を実施した時間は宇奈月ダムでは自然流下中であったが、宇奈月ダムから海域までの濁りの到達時間を考慮すると宇奈月ダム自然流下直前に流下したものをとらえているものと考えられる。
来年度は宇奈月ダム自然流下中のSSが高くなる時間で観測できるよう努めたい。
(委 員)
海域への濁り成分の流出実態を把握することは重要であり、是非SSが高くなる時間の観測を実施するようされたい。
(委 員)
C点の水深別SSを見ると表層のみ濁りがあり、表層が河川の影響を受けているように見える。
出水時は大量の水とともに多くの物質が海域に流入してくるが、表層のみが濁りをとらえられているのはなぜか。
(事務局)
今回の調査で非常に軽い物質は海域に流入後、表層に広範囲で拡散していくことがわかった。来年度は重い物質がどこへ行くかも調査したいと考えている。
(事務局)
今年度は出水規模が大きく一連の排砂、通砂後に河口域の測量結果から約17万m3もの土砂が河口部に堆積し、河口テラスが形成された。
このような事象も参考にしながら、ご指摘いただいた事項について検討していきたい。
(委 員)
海域の表層を流れているものは、下黒部橋地点を通過した細粒分のさらに細かいものが通過していると考えられる。
河口から海域に侵入する際、河口付近にとどまるものと海域表層に流れ出るものの粒度の境界を把握するためにも海域採水のSS粒度分析を実施した方がよい。
(委 員)
アユの胃内容物組成については、胃充満度も全体的に低く、消化過程にあり分類が出来ない有機物の占める割合が大きいがどんな有機物であるか想像できない。
アユは礫表面の藻類を削って食べるため、礫表面に付着しているものはすべて胃の中に入り、分解できるものは体内に吸収し、分解できないものは排出される。
したがって、有機物がアユの成長にとって価値のあるものかどうか判別できないと胃内容物組成の結果については評価が難しい。来年も同じ調査を実施するのであれば、有機物が何であるか詳しく調査すように努力されたい。
(委 員)
洪水の前後によるアユの食性変化は黒部川だけのものなのか。
(委 員)
一般論としてアユは、洪水などにより濁りや流量が増加すると瀬ではなく流れの緩い箇所に移動するため、食性は藻類から昆虫類に変化する。この変化は黒部川も例外ではない。
洪水になると、藻類が剥離し、濁りがなくなれば再び繁茂し、アユが瀬に戻るようになる。
(委員長)
付着藻類の洪水による剥離の関係について調査研究をしている例はあるか。
(委 員)
現在、藻類の生息環境を良好に保つためにどのような条件が必要かという研究が進められており、水の流れと土砂が動くという両方が関係するということがわかってきている。
アユ調査の付着藻類調査結果を見ると、出水が長期間続いた間は藻類が再生産出来ていないことがわかる。一般的には、出水があまり発生しないことも藻類にとって良くないと言うこともわかってきている。
これらから、今回の調査結果を見ると、8月に入って藻類が増加しているが、胃内容物組成では藻類より有機物が増加しており、この点をどう解釈すべきかは、まだわからないところである。
(委 員)
下黒部橋地点でのアユ個体数の減少や肥満度等が低い値で推移している要因として、下黒部橋地点で珪藻が安定的に生育していないことが考えられる。
最近の研究では、アユは積極的に珪藻を食べることによって、栄養分の多い藻類をアユ自らが増やしていくということが言われている。
これらも勘案し、今回の調査結果をどう解釈すればよいかが課題となると考える。
(事務局)
有機物は植物片や昆虫だけでなく藻類を食べたものが消化の過程で固まったと想定できるものもあるが、特定することは困難である。
胃充満度や胃内容物組成調査は排砂や出水がアユの生育にどのような影響を与えるかを把握するための調査の一つとして実施したものであるが、一定の採餌傾向は確認できたものの、具体的に何を食べているかを特定するまでには至らなかった。
事務局としては、これ以上の調査方法の改善は困難と考えている。
(委 員)
今年度の排砂、通砂の状況としては、非常に大きな出水であったこと、排砂、通砂を計3回実施したこと、特に宇奈月ダムから粗めの砂分が流下するようになったことがあげられる。
この結果として、アユの産卵床の調査データを見ても河床材料の粒径変化のみならず、河川の流路が変動する現象が確認できており、これは川の活性度が確保されているという面では非常に良い傾向である。
砂が流れない河川は、次第に河床材料の固定化が進み、樹林化が拡大するというのが一般的な傾向であるが、これだけの出水が発生した際に粗いものが流れ河道が動くということは環境上非常に重要なことである。
今回の調査結果から、河道において泥分が減少し、砂分が増加したことは宇奈月ダムから砂が流下しているためと推定できる。これと同時に河道が動くという意味では、良い傾向と考えられ、今後はこの状態も考慮し調査する必要がある。
今後は、今年度のようにこれだけ出水が連続して発生した場合の通砂のあり方を検討していく必要がある。
粗い土砂はダムへ年間一定量流入するため、年1回程度排出することは重要である。一方、細かい土砂は小規模な出水でも断続的に流入するため、なるべくダムにため込まず、新鮮なうちに通過させることが重要である。
細かい土砂については、ダムの水位を完全に下げないまでも、ある程度水位を下げれば、貯水池が小さくなり通過しやすくなることから、このような土砂を貯めない方法も考えられる。
事務局の方でも細かい土砂をなるべくため込まずに通過させる方法について検討してはどうか。
 
◇委員長より、今年度実施した調査の中でダム発生気体調査、黒部川以東他河川河口海域の底質起源調査、アユ調査のうち胃内容物、耳石調査等については、一定の成果、傾向が確認でき、かつ、これ以上の進展が見込めないことから調査の取りやめについての提案があり、了承された。
◇今年度の連携排砂、通砂の評価について、委員長から総評に関する原案が提示され、評価委員の協議の結果、一部修正を行い承認された。
−以 上−

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資料−2−@ 平成17年6、7月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果について
 
資料−2−A アユの生息実態及び生息環境調査について
 
 
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