平成17年8月1日(月)14:00〜16:30
名鉄トヤマホテル 4階「瑞雲の間」
1.平成17年6、7連携排砂及び連携通砂の実施経過について
2.平成17年6、7月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果(速報)について



評価委員会


第22回黒部川ダム排砂評価委員会における評価
H.17.8.12
 6月27日から7月5日にかけて実施された連携排砂及び1回目の連携通砂、さらに7月12日から14日にかけての2回目の連携通砂に関する環境調査結果(速報)から、以下の知見が得られた。
 なお、6月27日から7月5日までの期間中には断続的に大きな出洪水があり、宇奈月ダム完成以降最大の洪水(流入量)が発生した。
◇水質について
河川では、
  連携排砂及び1回目の連携通砂においては
    SS(浮遊物質)は宇奈月ダムから下流では過去の値に比べ最高値を示している。
      COD(化学的酸素要求量)も高い値がみられるが、過去の調査結果の範囲内である。
      DO(溶存酸素)飽和率は100%前後であり、これは過去の調査結果の範囲内である。
    2回目の連携通砂においては
      連携排砂及び1回目の連携通砂に比べSS及びCODは低い値を示している。
      SS粒度組成は、出し平ダム直下及び宇奈月ダム直下では平成16年度の連携排砂及び連携通砂に比べ、粘土・シルト分の割合が減少し、細砂分の割合が多くなる傾向がみられる。
  海域では、
      代表4地点における海水のCOD及びSSは過去の調査結果の範囲内であり、DO飽和率は100%を超える値となっている。
◇底質について
両ダム湖では、
  平成17年5月の定期調査に比べ、今回の一連の連携排砂及び連携通砂後は、COD及び強熱減量は低下し、ORP(酸化還元電位)は概ね上昇するなどの傾向がみられる。
    海域では、
      COD、強熱減量及びORPはこれまでの調査結果の範囲内であるとみられる。
以上が現時点における速報値に基づく知見であるが、全調査資料が出揃った段階において総合的に評価したい。
 
○実施経過について
詳しくは以下の資料をご覧下さい
資料−1−@ 平成17年6月連携排砂及び連携通砂の実施経過について
資料−1−A 平成17年7月連携通砂の実施経過について
 
[主な意見]
(委 員)
1回目の連携通砂が一時中断している際、出し平ダムの排砂ゲートが開いている時期があるが、なぜか。
(事務局)
出し平ダムでは水位低下中であったため排砂ゲートを開けていたが、一時中断後、排砂ゲートを開けている状態では多少の土砂が排出されることから、排砂ゲートを全閉したものである。排砂ゲートを閉めるまでに多少時間を要したのは、排砂ゲートが全開となった以降、一旦、操作員が下山し、ゲートを閉めることを決定してから、再度全閉操作のため上山し、操作を行ったために時間がかかっているものである。
(委 員)
連携排砂、通砂の作業は、連携排砂、通砂の実施基準となるダムへの実績流入量のみでなく、雨量観測点の増設などにより降雨量やダムへの流入量を精度良く予測した上で先を読みながら運用することが、重要と考えられる。
排砂実施機関では、降雨量やダムへの流入量の予測に関し、どのような取り組みを行っているのか。
(事務局)
黒部川は降雨があってからの流出時間が短い、降雨量がわかれば、何時間でどの程度ダムへ流入するかは、過去の降雨と流出の関係から予測することは可能である。ただ、現在の技術では、何時間後の降雨量がどの程度となるか定量的に予測することは困難であり、先を読みながら排砂の作業に活かすには、降雨の予測技術の向上を待たないと難しい。
しかし、今年度から民間気象会社の予測情報を取り寄せ、今後の排砂、通砂作業の参考とする等、改善に努めているところであり、今後も降雨量及び流入量の予測精度の向上に努めて参りたい。
(委 員)
降雨量及び流入量の予測は、過去の実績を蓄積し、解析することが重要となる。今後とも予測精度の向上に努めて頂きたい。
 
 
○環境調査結果について
詳しくは以下の資料をご覧下さい
資料−2−@ 平成17年6月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果(速報)
資料−2−A 平成17年7月連携通砂に伴う環境調査結果(速報)
資料−2−B 平成17年6月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果(速報)データ集
資料−2−C 平成17年7月連携通砂に伴う環境調査結果(速報)データ集
 
[主な意見]
(委 員)
新聞報道で、金沢大学田崎教授が連携排砂・通砂時に測定したDO等の観測値と排砂実施機関が測定した観測値に大きな違いがあると報道されていたが、その相違が生じた原因は何か。
(委員長)
観測値の相異については、過去において田崎教授が発表してきたことと評価委員会で発表してきたこととは、測定方法に根本的な違いがあったため、評価委員会としては公式にとり上げないということにしている。
(委 員)
1回目の連携通砂1日後の海域水質調査結果では、SSが再び上昇している。これまでの排砂及び通砂のデータからは時間の経過とともにSSは低減していたが、上昇した原因はなにか。
(事務局)
今の段階では何とも言えない、他のデータがそろった段階で考察を加えたい。
(委 員)
1回目の連携通砂時には、人命救助のため自然流下を途中で中止し、宇奈月ダムからの放流量をゼロとした。
放流量がゼロになった段階で、それまで流れていた土砂が川に堆積し、その後の流量の回復に伴い、河床に堆積した土砂が巻き上げられる力が作用したため、1日後調査ではSSが上昇したものと考えられる。
SSの粒度組成をみると宇奈月ダム直下の土砂粒径が昨年に比べ大きくなっており、宇奈月ダムは土砂が堆積する段階から通過させる段階に変わっていることがよく分かる。
砂分が下流河川に流れ出ることは、河川環境にプラスの面が多くあると考えられることから、宇奈月ダムが通過する土砂粒径が大きくなることに伴う下流河川の変化をよく観察する必要がある。
今回、宇奈月ダム下流でSSが高い値となっているが、これは粒径の粗い土砂がダムを通過し始めていることと考えている。
濁度は、粒径の細かい浮遊物質に反応しやすいため、過去の排砂、通砂時のデータと異なり、濁度とSSの相関に差が生じてきていると考えられる。単純にSSが高いため影響が大きくなってきていると考えるのではなく、粒径構成の変化とSS値との関係を解析していく必要がある。この点については、来年度のSS等の予測の際に考慮する必要がある。
黒薙川では、ピーク流量時にSSが6,000mg/l、濁度が3,000度という値となっており、排砂、通砂の影響がない自然の河川からの流入土砂を示す貴重なデータである。このデータも今後評価する際に参考となる。
(委 員)
連携排砂時の河川のBODが過去の値に比べ今回は比較的高い値となっている。また、出し平ダム直下より宇奈月ダム直下及びその下流でBODが20mg/lを越える高い値となっている要因はなにか。
(事務局)
出し平ダム直下については、今回、排砂の自然流下前にも長時間、排砂ゲートを開けて運用をしていたため、この間に連続して土砂が排出され、BODが比較的低かったと考えている。宇奈月ダムについては、前年度から堆積した土砂と2度の大きな洪水で新たに堆積した土砂が一気に排出したと考えられるが、今後、分析結果が出揃った段階で考察していきたい。
(委 員)
海域のDO飽和率が生地鼻沖で高い傾向にある。この原因についてはクロロフィルaのデータも検証していけばよい。
(委員長)
今回は連携排砂・通砂が連続して実施され、その後、降雨によっては、再び連続して2回目の連携通砂を実施する可能性があった。今回は事務局の方で検討を行った結果、多少基準流入量を超えても、2回目の通砂は実施しないこととしたが、事務局として具体的な考え方、今後の対応について説明されたい。
(事務局)
今回の措置については、1回目の連携通砂以降「通砂基準に達しても直ちに2回目の通砂を実施するのではなく、降雨状況やダムへの流入量などを評価して、実施の可否を判断する」ことで相各委員に了解を頂いたが、結果的には、洪水とならず、この試行的措置は実施されなかった。
今後は、今回の連携排砂・通砂の実績を踏まえ、来年度に向け科学的、客観的な検討に基づき、出水や洪水が長期化した場合の連携排砂・通砂の、より効率的かつ環境への影響を小さくする実施方法を実施機関として検討していきたいと考えている。
また、宇奈月ダムでは、今回の一連の洪水で相当量の土砂が流入し、安定河床に限りなく近づいたものと考えられるため、通砂時間の変更等通砂の方法についても合わせて検討して参りたい。また、検討の際には評価委員の先生方にご指導をお願いしたい。
(委員長)
連携排砂、通砂が長期化した際の対応については、今年度の状況も参考にし、来年度の対応を事務局として検討されたい。
底質について、2回目の通砂後の調査ではORP(酸化還元電位)が上がっており、また、COD、強熱減量等が下がっていることから、通砂を行うと底質が改善されるというデータが出ている。これらを踏まえ、事務局の方で分析・検討をされたい。
最後に、これまでの評価委員会では、評価委員会として、まとめや提言等をその都度、出してきているところであるが、今回は委員会の場で検討する時間が足りないため、委員長と事務局で各委員の意見や質問等を整理した上で、再度、各委員に諮り、今回の評価委員会のまとめとしたい。


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