平成17年1月27日(木)14:00〜16:30
名鉄トヤマホテル 4階「瑞雲の間」
1.平成16年7月連携排砂及び連携通砂の実施経過について
2.平成16年7月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果について



評価委員会



[評価]
 平成16年7月の連携排砂及び連携通砂は出し平ダム完成後3番目に大きな流量を観測した洪水時に行われた。この洪水に伴い、上流域から大量の土砂が流出し、黒部川及び黒部川河口海域におけるSS、CODなどが過去の排砂及び通砂と比較し一時的に高い値を示すなどの現象がみられた。しかし、生物相については排砂後の定期調査の結果からは、大きな変化はみられなかった。
 以上のことから、全体的にみて、環境に対し大きな影響を及ぼしたとは考えられない。
 今後も継続して調査地点ならびに調査項目等を検討しながら、調査を実施し、中期的な環境の変動状況をみていく必要がある。
 
○平成16年7月連携排砂及び連携通砂の実施経過について
詳しくは以下の資料をご覧下さい
資料−1 平成16年7月連携排砂及び連携通砂の実施経過について
 
[主な意見]
(委 員)
今回の連携排砂、通砂で、宇奈月ダム堤体付近の貯水池内の排砂ゲート上流の窪みが埋まったことから、今後排出される土砂の量、質はどう変わるのか。
(事務局)
これまでは、この窪みが粗い粒径の土砂を沈降堆積させる沈砂池の働きをしていたが、この窪みも埋まり、今後は、これまでより粗い粒径の土砂が出ていくものと考えている。
(委 員)
排出される土砂の変化に対し、海域に到達する土砂の粒径や質を把握することが重要であり、セジメントトラップなどの調査を強化していくことが必要である。
(事務局)
山からダム、川、海へと土砂や栄養塩類を流動させるという観点からは、粗い粒径も含んだ土砂が流れるということは、SSなどの最大値が変化することがあるものの、より自然に近い土砂の流動過程に近づくということであり、決してマイナスのものだけではない。
(委 員)
今後、宇奈月ダムが安定河床に近づくにつれ、宇奈月ダムから出て行く土砂は増え、アユの餌料となる付着珪藻が生えるような石の表面につく土砂も増加すると考えられる。したがって、この土砂を洗い流すため、今年度は出来なかったが、宇奈月ダムから300m/sの流量を一定時間放流する排砂後の措置により、きれいな河川水を放流して川を洗浄することは必要だろう。
(事務局)
今年度は大きな洪水により発生した流木が河川内に残存したことから、宇奈月ダムからの300m/sを放流する排砂後の措置を実施できなかったが、来年度は実施したい。
(委 員)
宇奈月ダムは、堆砂が進むことで、土砂をためる段階から通過させる段階になっている。これは、宇奈月ダムが出来る前の状態に戻っているだけであり、排砂される土砂量が増えているわけではない。
 
○平成16年7月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果について
詳しくは以下の資料をご覧下さい
資料−2−@(1/3) 平成16年7月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果について
資料−2−@(2/3) 平成16年7月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果について
資料−2−@(3/3) 平成16年7月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果について
資料−2−A 平成16年7月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査(データ集)
参考資料
 
[主な意見]
○水質調査
(委 員)
水質の長期的な変動を見ると、平成7年から変わってきているように思う。これはダム排砂の問題というより、上流域全体や酸性雨の問題かもしれない。これらは海域への影響は、あるのだろうか。
(委員長)
黒部川流域は花崗岩帯のため、pH緩衝能は小さい。したがって、河川水は酸性雨の影響を受けやすい。しかし、この黒部川の水が海に流れても、海水の緩衝能が大きく、また量も膨大なため、魚類に与える影響はほとんどないと考えられる。
○底質調査(ダム)
(委 員)
今回、出し平ダムで洪水1日後の7月26日に発生し、その後消えた浮泥層は、出水規模が大きかった今年度に限ったものなのか、出水直後にはいつも浮泥層が出来るものなのか、今後も調査する必要がある。
○水生生物調査(アユ調査)
(委 員)
肥満度や体長組成の結果からは、今年度の黒部川の餌料環境はそれほど悪くなかったと考えられる。
6〜7月期の胃充満度が高い体長100mm以下のアユは天然遡上アユで、空胃個体が多かった体長100mm以上のアユの多くは放流アユと考えられる。胃充満度が放流アユで低いことは、放流アユが黒部川の環境になじむまでに時間がかかったこと、もしくはなじめなかったことが考えられる。
耳石調査は、サンプル数が少なく、断定的なことは言えないが、採捕されたアユの内訳として天然遡上が多く、放流アユが少ないという結果となっている。
冷水病を保菌している可能性がある放流アユにとっては、黒部川の河川環境が厳しいこと等により、生残率が悪くなっていることが考えられる。
耳石調査により放流アユが洪水時に海に流された後、川に再遡上するかどうかを調査する必要がある。
(委 員)
今年度は富山県内の各河川でアユの遡上量が少ない特異な年であった。来年度もアユ調査を継続する必要がある。
洪水時には、塩分濃度が低くくなった鹹水(かんすい)海域の河口付近にアユが降下していると考えられ、その塩分濃度が低くなった海域から再遡上したアユは、耳石のストロンチウムが上昇しにくく、再遡上したかどうか判別が難しいが、今後も耳石調査を行っていく必要がある。
(委 員)
排砂及び通砂時において、河床に堆積した土砂が今年の融雪出水後に排砂前の河床の土砂粒径に戻るか調査する必要がある。1年間の河床の土砂粒径の変化を確認するためにも、来年度も土砂の堆積調査を実施する必要がある。
○水生生物調査(海域)
(委 員)
海域の動物プランクトンや底生動物などの生物調査結果では、調査年により変動があり、この変動をどのように見るのか。
(委 員)
動物プランクトンは過去のデータと同程度であれば良いのではないか。
底生動物は環境指標種があり、環境が悪化した場合に出現する特定の種の生息数が多くなると問題となる。富山県水産試験場でも調査を実施しているが、問題となる結果は出ていない。
植物プランクトンは赤潮の原因となる種の生息密度が高くなると問題となる。富山県水産試験場の調査からは、問題となる結果は出ていない。
(委 員)
動物プランクトンについて、A点とC点のデータの違いは自然の変動幅の範囲なのか。
(委 員)
海域C点は環境面から良くなっているのか、悪くなっているのか。
(委 員)
C点は河口前面であり、これまでも底質の調査結果に変動がみられたように、底質の状態が一時的、局所的に変化し易い箇所である。したがって、生物調査の結果も変動の幅がかなり大きくなったと考えられ、底生動物も含めた生物調査の結果からC点の環境が良くなっているのか、悪くなっているのかは分からない。
今後、排砂される土砂の粒径が粗くなってくれば、C点の底質環境も変わり、それによって底生生物相も変化するだろうと想像している。その変化が漁業によい効果をもたらすかどうかは不明だが、細かい砂がぎっしり詰まった環境より、粒径の大きい砂が適度に混じった環境の方が底生生物にとってより好ましいと考えている。
(委 員)
全国的な傾向として、土砂供給の減少による環境変化が課題となっており、ダムから積極的に土砂を供給する事例も出てきている。宇奈月ダムから排砂時に出て行く土砂の粒径が、これまでの細かい土砂から粗い土砂に変わることが予想される。河口域でも粒径の変化と環境に対するプラス面の影響もみていく必要がある。
【参考資料】
○発生気体調査
(委 員)
宇奈月ダムのような新しいダムでもメタンは発生するのか。
(委 員)
メタンは浮泥層が湖底に沈澱し発生したものなのか。そうでなければ、メタン発生の要因は何なのか。
湖底の堆積層にメタン発生に十分な有機物を含む層があり、そこが還元的であることになる。
(委員長)
どのようなダムであってもメタンは発生するものである。メタン自体は生物に対して無害なものであるが、還元化の進行に伴い発生する硫化水素が生物には問題となる。ただし、黒部川には硫化水素を生成する硫酸イオンの量が少ないことから、ダム湖においては硫化水素が発生する可能性は低いと考えられる。また、来年度は出し平ダムにおいても発生気体の調査を行う必要がある。
○海域セジメントトラップ調査
(委 員)
密度の濃い土砂は海域底層を流れているため、海域セジメントトラップは、現在の水深10m地点に加え、底層でも実施する必要がある。
また、水深毎の変化をみるために中層などでも調査を行う必要がある。
(委 員)
黒部川は細かい土砂がすぐ海に流出し、粗い土砂の河床となっており、現在は河道内に樹林がみられるなど、流路が固定されている。
(委 員)
洪水などにより河床が撹拌されないと、河床の堆積土砂が移動しなくなり、河道の中が樹林化しやすくなる。このため、河川には適度な流量の変動と土砂の供給が必要である。
【委員会終了にあたって】
(委員長)
委員からご指摘頂いた事項は、平成17年度の排砂に向け十分検討し、連携排砂に伴う調査計画に反映するようにされたい。







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