平成16年1月15日(木)14:00〜17:00
名鉄トヤマホテル 3階「清風の間」
1.粘土鉱物、スメクタイトに関する講演
2.平成15年6月連携排砂の実施経過について
3.平成15年6月連携排砂に伴う環境調査結果について



評価委員会



[評価]
 平成15年6月の連携排砂に伴う環境調査結果について審議したところ、特に問題となるような現象は見られなかった。なお、環境調査については次の点を考慮し取り組むべきである。

小川の河口付近海域に堆積している土砂の供給源を調査するために行った海域堆積土砂に含まれる珪藻殻調査では、堆積土砂の供給源を把握することが困難であるため別の調査方法を検討する。
黒部川における魚の生息場所としての瀬や淵の土砂堆積状況を把握するために行った調査は、調査方法に工夫を加えた上で平成16年度も実施する。
黒部川の河口付近海域の底質調査については、平成16年度も排砂実施機関による調査結果と富山県水産試験場による調査結果を総合的に解析し評価する。
堆積量調査(用水路・海域)、地下水調査のように、これまでの調査結果から排砂の影響が見られないと評価した調査については、調査地点や調査回数を絞り込むなどの見直しを行う。また、排砂の影響を評価するのに重要と判断される調査項目については、調査地点や調査回数を増やすなどの見直しを検討する。
 
[主な意見]
○平成15年6月連携排砂に伴う環境調査結果について
(委 員)
小川の河口付近海域に堆積している土砂の供給源を調査するために行った海域堆積土砂に含まれる珪藻殻調査では、堆積土砂の供給源を把握することは困難である。
水生生物調査は、経年的な変化を比較する観点から、平成15年度までの調査を継続すべきであり、新たな調査を増やさなくても良いのではないか。
黒部川の瀬・淵調査については、黒部川全体の瀬・淵の分布状況と淵の深さを調査する必要がある。
(委 員)
現在の技術では貯水池や河川に堆積した土砂量を把握することは可能であるが、排砂中や洪水中などに移動する土砂の観測が難しいため、河川の土砂動態を把握することは困難である。このため、移動する土砂の観測技術の改良や開発に努め、土砂収支シミュレーションの精度を向上させる必要がある。
(事務局)
黒部川の瀬・淵調査は、内水面漁協からの要望を受け魚が住みやすい川づくりを進めるうえで、魚の生息場所が排砂によってどう影響を受けるかを調査したものである。調査位置については、愛本堰堤より下流の代表的な瀬と淵を選定したものである。
(委 員)
堆積物調査(用水路、海域)や地下水調査のように、これまでの調査結果から排砂の影響が見られないと評価した調査については、調査地点や調査回数を絞り込むなどの調査方法の見直しを行っても良い。また、排砂の影響を評価するのに重要と判断される調査項目については、調査地点や調査回数を増やすなどの見直しが必要である。
(委 員)
黒部川の河口付近海域は、その外側の海域の状況を見ていく上でも重要な調査海域である。この海域は局所的に有機物などが溜まりやすい場所であるため、この溜まりやすい場所の範囲を見るためにも、富山県水産試験場の底質調査結果も併せ評価していく必要がある。
(事務局)
黒部川の河口付近海域は河川の流れの影響を受けやすい場所であるとともに、局所的に有機物などが溜まりやすい場所でもあり、常に底質環境が変化するところだと考えている。このため河口付近海域については、全体的な傾向を見ていけば良いのではないかと考えている。
(委 員)
富山県水産試験場が行った黒部川の河口付近海域のSt.42地点の底質調査については、局所的・一時的に有機物などが溜まっていた底泥を採取したため、CODや全硫化物が高くなった可能性もある。この海域は流れが速かったり、礫分が多かったりで、底質採取が難しい場所である。
(委 員)
富山湾全体を対象として富山県水産試験場が平成13年度に実施した底質調査の結果を見ると、富山湾全体の中で東側の黒部川の河口付近海域の底質が悪い状況にあるとは見られない。
(事務局)
黒部川の河口付近海域の調査地点の見直しについては、漁業者や水産試験場とも相談しながら検討していきたい。
(委 員)
これまでに排砂実施機関がおこなった海域の水質調査結果のうち、CODやSSの調査データを海域図に図示することで、排砂中と排砂1日後の濁りの拡散範囲が容易に判断できる。
平成15年6月連携排砂に伴う環境調査結果に限定したことではないが、これまでに得られた調査データの活用を更に進めていくべきである。

− 以 上 −

【粘土鉱物(スメクタイト)に関する講演】
◇講演者   北 川 靖 夫 氏
  福井県立大学生物資源学部教授
福井県立大学大学院生物資源学研究科教授
 
◇講演要旨
  黒部川水系におけるダム湖底沈砂の粘土フラクションには、少量のスメクタイトが認められるが、出水時の濁水中にもまた同じような割合でスメクタイトが存在していることから、スメクタイトがダム湖底で生成したのではなく、河水によって上流から運ばれてきて沈殿したものと考えられる。
  ダム湖底よりはるかに強い生成条件にあるポドゾル土でさえ、スメクタイトの生成には数千年の時間が必要であることを考えると、わずか十年程度で化学反応が遅いダム湖底でスメクタイトが新たに生成されることは、全く考えられない。むしろ水圧や土圧による続成作用によって、スメクタイトが減少する可能性の方が高いものと考えられる。
  低水温のダム湖底においては微生物活動は活発でないと考えられることから、ダム湖底では微生物作用による短期間でのスメクタイトの生成は起こりえないと考えられる。事実、そのような条件下でスメクタイトが微生物作用によって生成するという報告は見あたらない。
  海水にさらされたスメクタイト粒子が、他の粘土鉱物と比較して凝集・沈殿しやすいということはなく、いったん凝集・沈殿したスメクタイトは、淡水で洗浄しなければ再分散はしない。また、スメクタイトが他の粘土鉱物に比べて特に有機物を吸着したり、魚のエラに吸着しやすいことは常識的には考えられない。
 



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(北川教授講演資料)
(富山県水産試験場資料)
(藤井委員報告資料)
 
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