白山砂防女性特派員

特派員レポート


ブックレビュー

●「崩れ」  幸田 文 著

講談社文庫  ISBN 06-185788-6



「崩れ」講談社文庫より引用

崩れ見てある記

昭和51年 72才の幸田文は大谷崩れをみて心の種が芽を吹いた
   巨大な崩壊
   自然の威に打たれて木偶のようになった
今まで目に映っていた山の緑の美しさが
川の蛇行、水量水勢、防災堰堤、土肌の露出した傾斜面が急に気になり始める

着物しか着たことがない彼女がズボンをはいて、専門書を読みあさり
なんと日本には崩壊山地が多いことかと
どうすればよかろうかと胸がつかれる思いにかられる

崩壊地をみておこう
困りもの、もてあましものといわれる崩壊
しかし彼女は崩壊地に
無心な川をみ また憂いと淋しさを感じる

「弱いから崩壊は起きる」という一言に
巨大なエネルギーは弱さから発している という感動を持つ

地すべり  土石流  火山

新潟県東頸城郡松之山地すべり
  日光男体山の崩れ
     蔦山の崩壊
        長野県北安曇郡稗田山崩壊
               浦川姫川の暴れ

人間はつい人間の尺度でものを思いたがるのか―――
   これじゃとても自然の懐に入れない

桜島

人力が防いでいるところもあり人力が苦もなく屈しているところもあり
自然任せが賢明か不屈の人力に頼むべきか

有珠山

人は無為無策に枯れ山を眺めている筈もない
  大丈夫 緑は取り返せる


別当大崩れ

 私達のいいたいこと、感じたことをことばにしてくれている気がします。
 彼女ほどの行動力はないけど、白山砂防で学んだこと、見たことを重ねあわせてみてはいかがでしょう。
 ズボンをはかなくてはいけなくなったところなんかユーモアたっぷりです。
 「どうすればよかろうかと胸がつかれる」これが砂防の原点ではないでしょうか。
彼女が建設大臣になっていたらどうなっていたでしょうなどと想って見るのですが……


第1期白山砂防女性特派員・H.N






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