金沢河川国道事務所

第5回活動--平成29年9月28日(木)

 第5回活動は、富山県が行っている砂防事業の見学をしました。
 胡桃(くるみ)地区では、地すべり対策事業の概要や工法の説明を受け、現在施工が行われている集水井(地すべり地域の地下水を集水、自然排水させる井戸)を上からのぞいたり、城光寺地区では急傾斜である斜面の安定を図る法枠の工法や構造を間近で見せていただきました。
 午後からは土石流危険渓流である京平と白谷川の2つ砂防事業を見学し、砂防堰堤の構造や施工方法、土石流に対する効果などの説明をしていただきました。
 4つの砂防事業を見学し、人家や県立高校の通学路、災害時要援護者関連施設、果樹園などと保全対象が広く、また狭い場所や現場条件がよくない場所も多いため、現場の方々のご苦労をほんの少しですが、理解できたように思います。

 雨風が強く天候が悪い中にもかかわらず、富山県の担当職員の方をはじめ、施工業者のみなさんが貴重な時間を割いて、特派員の質問にも丁寧に回答していただき、とてもわかりやすく土砂災害や砂防事業を学ぶ事が出来ました。
 関係者の皆様ありがとうございました。

★参加人数★
 9名

★富山県砂防事業メモ★

 
《氷見市胡桃地区地すべり対策事業》
  1964年(昭和39年)7月6日正午頃、氷見市胡桃(くるみ)地区で大規模な地すべりが発生しました。
 この地すべりによって、東西約500m、南北1,500m、面積にして約70haの広大な山地斜面が崩壊・移動し、人家の大部分を破壊し、移動した土塊流は河谷を埋め道路を寸断しました。
  幸いにして、日中であったことと、警報装置が備えられていたために、人的被害が全くなかったものの戸数87戸の胡桃集落を一挙に壊滅させました。
 昭和39年以降から行っている対策工は、集水井工、合成ボーリング工、鋼管杭工、堰堤工、排土・盛土工等々地すべり地域により多岐にわたります。
 こうした継続的な対策事業により、地下水位や顕著な変状は抑制されています。

詳しくは・・・ 
富山県 胡桃地区地すべり対策事業 ホームページへ


 
《高岡市城光寺地区急傾斜地崩壊対策事業》
  高岡市城光寺地区は地質が脆弱で、豪雨により法面の小崩壊がみられるため、法枠工等の急傾斜地崩壊防止対策を行っています。
 保全対象は人家13戸、県道小矢部伏木港線等で、斜面が急なため、崩壊が起きると一気に甚大な被害に及ぶと思われ、継続的な対策事業が行われています。


 
《京平(きょうひら)通常砂防事業》
  富山市西金屋地区にある新堀川水系 京平は、土石流危険渓流であり、平均渓床勾配が約1/6と急流なため、豪雨により土石流が発生すると下流の多くの人家や道路のほか、災害時要援護者関連施設等に甚大な被害を及ぼす恐れがあります。土砂災害から住民の方々の生命・財産を守るため、現在砂
防堰堤1基と渓流保全工の整備を行っています。


《通常砂防事業 白谷川砂防堰堤》
  富山市東福沢地区にある神通川水系 白谷川は、土石流危険渓流であり、山腹の荒廃や渓岸浸食が進行し、渓床に不安定土砂が堆積しています。また、平成18年7月の豪雨では、土砂が流出し、田畑の一部が埋没する被害が発生しました。
 今後集中豪雨等により、土石流が発生すると下流に存在する人家や県立高校の通学路、主要交通等に被害を及ぼす恐れがあります。土砂災害から住民の方々の生命・財産を守るため、現在砂防堰堤1基の整備を行っています。


  • ★氷見市胡桃(くるみ)地区地すべり対策事業
 
富山県の担当職員の方から説明がありました。
大きな図面等で現場のイメージがしやすかったです。
 
施工業者の方が資料や雨よけのテントを用意してくださいました
 
どんな質問でも丁寧に答えてくださいました。(右は現在施工中の集水井)
怖々と覗き込む特派員。
スケールの大きい工事を間近で見て驚いた様子。

  • ★高岡市城光寺地区(2)急傾斜地崩壊対策事業
斜面の急勾配に特派員からどよめきが・・・(^_^;)
急斜面直下に人家があり、土砂災害対策事業の重要性がわかります。
(右写真)
 
雨脚が強まる中、県担当職員の方から事業概要説明を、
施工業者の方は施工方法等の説明をしていただきました。
  
 
 時間が押しお昼休みになってしまったにもかかわらず、
親切丁寧な対応に感謝の気持ちでいっぱいです(*^_^*)
  

  • ★京平(きょうひら)通常砂防事業・白谷川砂防堰堤
 
京平通常砂防事業。砂防堰堤1基と渓流保全工を整備しています。  
 
 渓流保全工は、渓流の下流部において想定される洪水を安全に
下流に流すためのものだそうで、
砂防は止めるだけでなく、安全に流すことも重要なのですね。
  
 
通常砂防事業 白谷川砂防堰堤。砂防堰堤1基を整備しています。
右の写真は外部壁面材(ダブルウォール)前面の材料です。
 
 
初めて見る工法に時間が押していたのですが、
特派員からたくさん質問が出ました。
  

活動報告

荒木】【伊藤】【小林】【達田】【畠田】【餅井】【山岸】【山口(昭)】【山口(敬)

荒木
 第3回、第4回と2回続けての中止があり、今回はとても楽しみにしておりました。実際、4カ所の見学は中身がぎっしり詰まったものでした。あいにくの雨でしたが。
 1カ所目は氷見市の胡桃地区において集水井工の見学。深さは最終28mになる山の中での工事でした。頂いた資料のB-2ブロックの変状がゆがんでしまっていて(恐ろしい)地面は動いてるとの実感でした。
 2カ所目は急傾斜地の現場で、上にも下にもすぐそこに民家があり、工事をしていただかなければ住めない!工事は自分たちでは出来ない!改めて公共工事の必要性を実感しました。
 3カ所目・4カ所目は、富山市に入り通常砂防事業の現場を見学。
 今回も皆さんの中身ある質問に関心しました。お世話してくださった方々、雨の中を説明してくださった方々、資料作成、安全運転ありがとうございました。

伊藤
 前回2回中止の後で久しぶりの現場見学でしたが、雨の中で説明してくださった方々本当にありがとうございました。
 胡桃地区では集水井をのぞいて、深さにびっくりしてしまいました。まだ途中でしたが、地盤の硬いところでは掘削にも時間がかかるし、大変だと思いました。
 城光寺地区では真下に人家があり、必要性、安全性が痛感されました。1年前に施工された箇所は、植生工によりすでに草木が繁茂していて、全く自然の状態になっていることに驚きでした。
 京平地区では、災害時要援護者関連施設があるので、危険から守るための砂防事業でしたが、災害弱者の方たちを守るのは特に重要な工事だと思いました。
 白谷川砂防堰堤工事場所では、内部材のソイルセメントに関して、土砂の水分量、その日の天候等で混合の水の量、内部材の必要量に関して、その都度考えねばならないと知り、本当に大変な仕事だと思いました。


小林
 小雨の中、9名参加で出発。肌寒い日でした。氷見、高岡、富山市と移動、内容も盛りだくさんでした。
 一番印象に残ったのは、1番目の氷見市胡桃地区の集水井工でした。昭和39年7月16日に大地すべりが起き、被害は87戸、1小学校、埋没した田畑、家畜も多数。死者がいなかったことが何よりでした。しかし、そのときの恐怖はいかばかりだったことでしょう。現在も抑制されてるものの動いている場所もあるとか。被災された方は、別のところに住み、車で農作業に通っており、おいしい低タンパク米を作っておられる由。
 石川県と背中合わせ状態ながら、富山県側の地層が脆弱でなだらかなため、ある期間に水が溜まると地すべりが起きると。
 工事現場では28mもの下をのぞき、ぞっとしました。下降するのも命綱をつけ、らせん階段を下り、掘削する苦労。酸素濃度も測り、送風しているとか。大きな音とともに閉塞感はないんだろうか?
 4月〜11月までしか工事が出来ないこともあり、土木に携わる人たちは危険、天候にも耐え、大変な仕事だと思いました。
 いろいろな方の力により、安全、安心して住めることを感じました。私も手取川流域に住み、白山砂防工事がたゆみなく続いているからこそ、昭和9年の洪水の後、静かに暮らせることに感謝します。
 雨の中説明してくださった方々本当にありがとうございました。

達田
 第3回、第4回と大雨の影響で中止になったため、今回が私にとって初めての砂防工事現場の見学になりました。砂防=人里離れた山奥のイメージが強いのですが、今回訪問した富山県内の現場は比較的人家に近い場所であり、土砂災害の危険は私が思っていた以上に身近にあるのだと気づかされました。
 地すべり対策の集水井工、急傾斜地の法枠工、渓流保全工、砂防堰堤と見学しましたが、コストと工事による環境の変化も意識されているように思えました。
 特に法枠工では前年までに完成した斜面から植物が生い茂っており、短期間でもこれほどまでに緑が回復できるのだなと驚かされました。
 また現在建設中の白谷川砂防堰堤では、堰堤をつくるために削り取った土砂を内部材として再利用するダブルウォール堰堤を採用。地形や地質により向き・不向きはあるそうですが、費用と排出土砂を抑える努力をするのは、公共工事に対して厳しい意見が多い現在では大切なことだと思います。
 冬期は雪の影響も出てくるかと思いますが、作業員の方には安全第一で作業お願いします。。
 雨の中丁寧に説明してくださった皆様、ありがとうございました。。

畠田
 天候不良で2回中止の後、楽しみにしていたのに雨になってしまった。でも、見学場所の先々でレジメをご用意くださった方々、ありがとうございました。
 隣の富山県でもなかなか行けないところでした。学校の通学路、災害時要援護者関連施設の裏山、石川県との県境地区など。
 県境の胡桃地区、なんと昭和35年からずっと地すべり対策を続けている。集水井を何本も埋め込み、上層の土壌を地すべり地域際に移動して押さえとし、近年は落ち着いてきたらしいです。でもまだ終わらない。
 災害時要援護者関連施設の裏山の渓流保全工事、小さな渓流なのに万が一の時のために周りの景観に配慮して整備していた。
 県立高校へ唯一の通学路のその横にある白谷川で雨量が増えると土石流が発生する危険性があるとかでダブルウォール堰堤工事を整備中。先を見越しての大きさなのか、その堰堤はとても大きかった。
 現場で説明を受けているときには強かった雨脚が、帰りには晴れました。 住宅地の裏山の急傾斜地の対策は法枠工というのか。四角い枠の部分に鉄筋を差し込むとは知らなかった。
 工事後は出来るだけ自然の植栽で緑化しているとか。年々自然との共生に気遣った公共工事の工法が多くなったと思う。
 とても勉強になりました。前回中止になった立山砂防管内カルデラ見学には機会があれば是非行きたいと思います。。

餅井
 氷見市胡桃地区の集水井工では、平成26年第7回活動で参加しました奥能登の惣領地区の集水井を思い出しました。
 今回は、施工を見学させていただき、大がかりな工事工程の説明を受けて感心しました。
 高岡市城光寺地区の急傾斜地の法枠工工事には、女性監督が携わっておられてたくましさを感じ取りました。以前の法枠工済みの範囲は、草が生い茂っておりました。この高台のふもとの住民の人々は安心して暮らせそうですね。
 富山市西金屋地区で、特に災害時要援護者関連施設(めひの野園)が土石流危険渓流の下流にあるのは、とても心配なことですが、渓流保全工が平成30年度に完成予定ということで一安心しました。今までに見学した中では小さな堰堤でした。
 富山市東福沢地区の白谷川砂防堰堤(85m×T12m)。富山平野の末端部にある県立中央農業高校の敷地内という場所なので、土石流が発生したら通学路にも影響がありそうで、早く完成してほしいところですね。ゲリラ豪雨が発生しませんように祈っています。

山岸
 当日はあいにくの天気となってしまいましたが、どの現場へ行っても時間が押しているにもかかわらず、県の担当職員・施工業者の方々が嫌な顔一つなさらず丁寧にわかりやすく説明をしてくださったこと、施工の手をお止めして貴重なお時間を頂戴してしまったこと、申し訳なさと感謝の気持ちでいっぱいです。
 見学前から、「白谷川通常砂防事業の砂防堰堤(ダブルウォール工法)」が気になり、ネットで調べたり、会社で聞いたりしていました。
 現場は前年度に完成した堰堤がありましたが、残念ながら内部材搬入状況や上流側の外部壁面材などを見学することは出来ませんでした。しかし、施工関係者の方々の説明や資料、見学のしおりの資料などにより漠然とではありますが、イメージすることが出来ました。
 堰堤の強度、現地で発生した土質、内部材の混合場所の確保など条件を満たさないと活用できない面もありますが、工期短縮、残土量の減量などのメリットもあり、今後も採用される工法だと思いました。
 4工事箇所の見学で中身の濃い活動となりましたが、山の中の現場が多く、全体的に道幅が狭かったため、バスの運転手さんはさぞ苦労なさったことと思います。
  お陰様で有意義な現場見学が出来ました。関係者の方々、どうもありがとうございました。

山口(昭)
 胡桃地区地すべり対策事業「集水井工」・城光寺地区急傾斜地崩壊対策事業「法枠工」・京平通常砂防事業「渓流保全工」・白谷川通常砂防事業「砂防堰堤(ダブルウォール)」の4つの事業を見学させていただき、とても充実した一日でした。特に「集水井工」の現場では写真などを示しながら説明していただき、実際に井戸を掘り下げる作業も見学でき、とてもわかりやすく興味を持ちました。
 集水井の完成により地すべりが沈静化し、安心して地域の方々が暮らすことのできる、大切な事業だと思いました。
 最後に、天候不順のため中止となった立山カルデラ現地視察、白山砂防施設見学のしおりを見ながら、いつか見学に行ってみたいと思いました。

山口(敬)
 今年は悪天候が重なり、第3、4回の活動が続けて中止となり、この第5回の富山県砂防事業見学は久しぶりの活動となりました。
 途中雨がひどくなり、雨具を着ての見学となりましたが、計画通りの4箇所全部の工事現場に行き、わかりやすい説明を受けて、大変有意義なものとなりました。
 4つの工事現場は@氷見市の胡桃地区地すべり対策事業「集水井工」、A高岡市の城光寺地区急傾斜地崩壊対策事業「法枠工」、B富山市の京平通常砂防事業「渓流保全工」、C富山市の白谷川通常砂防事業「砂防堰堤(ダブルウォール)」とそれぞれ異なる工法のもので、現在工事中の現場を真正面に、こんなに近くで説明を聞けたのは、とても貴重なものでした。感想は@の胡桃地区の集水井工のみとなりますが、ここは昭和39年に大規模な地すべりが発生し、農地を含め住宅87戸の集落全体が壊滅した地区でした。不幸中の幸いですが、いち早く兆候を察知して避難がなされ、人的被害がゼロだったのは素晴らしいと思いました。
 その後4年かけて大規模工事が行われ、これまで半世紀以上も災害が出ていないのも素晴らしいです。
 しかし、平成9年に地すべりの兆候を発見し、これまでの排土、盛土工に加えて、地すべりの大きな原因となる地下水を排水するために、大きな穴を掘って、そこに各箇所から溜まった地下水を集め、効率よく排水するために、ボーリングもするという集水井工という工法の現場でした。
 それにより年間最大5mもの地すべりがあったところもほとんど観測されていないレベルまで下がったとのことでした。
 大きな災害につながったかもしれない地すべりを未然に防いで、これぞ砂防工事とその大切さを実感させてくれました。
 企画された白山砂防のスタッフの方々をはじめ、富山県砂防の職員の方々や工事現場の方々、雨がひどくなりながらもパネルを用意してくださって、丁寧に説明してくださり、とてもわかりやすく、よい研修となりました。
 ありがとうございました。