金沢河川国道事務所

第7回活動--平成26年10月8日(水)

 第7回活動は、石川県の奥能登土木総合事務所管内の砂防事業現場を見学しました。
 県の砂防事業は、白山砂防とは少し違う性質の事業でした。
 人家のすぐ裏にあり、がけ崩れの危険性がある急傾斜地は、特に対策が急がれていました。白山砂防よりもより地域に密着しており、事業の必要性が強く感じられました。
 石川県の土砂災害警戒区域などは、 石川県土砂災害情報システム「SABOアイ」 でご確認いただけます。

★参加人数★
 16名

★見学メモ★
1.石休場地区 急傾斜地崩壊対策事業
 石休場地区は、輪島市石休場町に位置し、保全対象の人家13戸、主要地方道七尾輪島線(第一次緊急輸送路)及び市道を含むがけ高34m、勾配40°の急傾斜地である。
 古くから小崩壊を繰り返しており、地域から不安の声が寄せられていることから、地域住民より早期着手を強く要望されており、早急な対応が求められている。

2.谷内川通常砂防事業
 平成10年9月に、台風7号により発生した山腹崩壊に伴い、人家近くまで土砂が流出した。現在も不安定な土塊が渓流に堆積しており、今後の降雨により再び土石流が発生する恐れがあるため、早急な対策が必要である。

3.防衛省 惣領地すべり防止工
 昭和29年から30年、輪島市惣領地区において防衛に関する周辺整備(道路、通信施設)を行ったところ、地すべり現象が生じた。調査の結果、地すべり発生の原因は防衛道路建設によるものと断定されたため、防衛省が地すべり対策をすることとなった。
 昭和44年から昭和55年、浅層すべりに対する防止対策工を実施したが、依然として地すべり活動が続いたため、再調査を実施したところ、深いすべり面を確認したため深層地すべり対策へ以降した。
 現在は、継続して深層地すべり対策を実施している。

4.道の駅千枚田ポケットパーク
 千枚田ポケットパークから望む千枚田は、平成23年に世界農業遺産に認定された「能登の里山里海」のシンボル的存在となっている。
 千枚田の中を通る国道249号線は、地すべり地帯であることを考慮し、軽量盛土材を使用した工法(EPS工法)を用いている。EPS工法の施工例としては当時日本初であった。

5.川島急傾斜地崩壊対策事業
 当箇所は、穴水町川島地区に位置し、保全対象として災害時要援護者関連施設(4施設)を含む、がけ高60m、勾配50°の急傾斜地である。このため、がけ崩れ発生時には甚大な被害が想定されるため、早急な対応が求められている。


  • 石休場地区急傾斜地崩壊対策事業
 

  • 谷内川通常砂防事業
 

  • 惣領地すべり防止工
 

  • 千枚田ポケットパーク
 
 

  • 川島急傾斜地崩壊対策事業
 

活動報告

伊藤(真)】【伊藤(弓)】【田渕】【西村】【松本】【道脇】【】【餅井】【山岸

伊藤(真)
 今回、千枚田ポケットパークで見た、発砲スチロールの道路に興味が湧きネットで調べてみました。
 全国の道路、東名高速道路でも多用されているとか!
 1、密度は土砂・コンクリートの100分の1。
 2、発砲スチロールは水と結合しないから水が浸入しない。
 3、施工速度が速く、大型建設機械が必要ない、加工が容易。
 4、経済的にも安く出来る
 特に、軟弱地盤上で軽量のメリットを発揮しているそうです。まさか道路の下にあんな軽いものが入っているとは、意外でした。
 川島地区の様に災害時要援護者関連施設が隣接する急傾斜地は、現在99ヶ所あり43ヶ所が完了、現在11ヶ所が工事進行中だということですが、莫大な工事費をかけてまで、対策するよりも、安全な地域へと(石休場地区も含め)移住してもいいのではと思ったのですが、工事に取り掛かるまでにはいろんなご苦労があったのではないかと思いました。やはり地元の人達は住み慣れた(特に高齢者の方)土地から離れたくないのでしょうね。
 いろいろ有難うございました。
 
伊藤(弓)
 好天に恵まれて、現場視察が4箇所もあり、充実した1日でした。県の担当の方の説明も丁寧でとても解りやすかったです。
 ・石休場の急傾斜地は、すぐ下に人家が有り、必要性をとても感じました。すでに工事が終了した場所はフォレストベンチ工法で自然の森への回帰が良いと思いました。
 ・谷内川砂防現場では、渓流が小さいけれど、多雨の際は直接人家に危険を及ぼすとのことで、小さくても砂防が必要ということを認識しました。
 ・惣領の地すべり防止工の場所では、道路を造った為に影響が出たとのことで、色々なことが起きるのだと思いました。
 ・千枚田ポケットパークの道路下に発泡スチロールが使用されていてびっくりしました。発泡スチロールに強度があるとのことで新発見でした。
 ・川島急傾斜地は、災害時要援護者関連施設が4箇所もあり、これも崩壊対策の必要性が十分に感じられました。
 
田渕
 千枚田ポケットパーク。先日の雨で田んぼの土手が崩れたそうですが、世界農業遺産になったことでこの先手入れがより大変だと思いました。
 惣領の地すべり防止の集水井と同じようなものも千枚田にあって、うまく景観に溶け込んでおり、気づかないくらいです。
 道路の下が発泡スチロールとは驚きです。
 主人の里も能登町にあって今回見学した石休場の急傾斜地と同じような所です。もし地すべりが発生した場合どちらに動くかです。
 まだまだ・・・参加しなければ知り得ないことばかりです。
 
西村
 6年目にして初めての奥能登現地視察に参加させていただきました。今回は16名も参加者がいて、久し振りに賑やかな楽しい会になりました。
 石川県の奥能登、里山里海と呼ばれて来年の新幹線開業に向けて、又来春の朝連ドラの町として注目を浴びている場所です。
 4ケ所の現場と休憩所として新しく整備された世界農業遺産の千枚田ポケットパークへ行きました。この千枚田の横を走っている道路の中はEPS工法で発泡スチロールが盛土材に使用されていました。道路の壁面からその状態を覗き見る事が出来たのは良かったです。
 @ 輪島市、石休場の急傾斜地
 奥能登には1075ケ所もあるとの事で急傾斜地を背にして民家が有り、人家は13戸有ります。工事している今もそこに住まいをされていると言う事に驚きました。
 A 谷内川砂防事業
 ここも人家16戸の杉平町地内、以前の台風により発生した山腹崩壊により現在も不安定な状態の中で生活していらっしゃいます。平成14年〜29年の工期で1号〜3号の堰堤の工事が施工されていました。
 輪島市内での美味しい昼食後、次の視察地内は、
 B 輪島市の惣領地すべり防止工事(防衛省輪島分屯基地内)
 集水井戸を覗いてきました。この辺りは道路を作った事により、広く地すべりが発生し、辺りには50基の井戸が掘られて地下水を海の方に流しているとの事です。自衛隊の基地があり、防衛省と石川県との工事分担金は9:1なのだそうです。
 C 穴水町川島地内の急傾斜地崩壊対策事業
 工事現場の辺りには災害時要援護者関連施設の介護老人施設、保育所、穴水総合病院などの施設が建っているのですが、なぜこの様な場所に集中して建てなければならないのかが解りませんでした。県内にはこのような状態の急傾斜地が99ケ所あるそうです。
 今回も盛り沢山の現地を視察する事が出来、あらためて工事の必要性を感じました。これからも管理保全を宜しくお願い致します。有難うございました。
 
松本
 お天気も良く能登は久しぶり(初めて?)なのか参加者も多く、研修には良かったです。
 能登は高い山もなく、土砂災害や地すべり災害にはあまり縁がないと思っていましたが、やはり視察に行くと半島の地形で急傾斜地が多く、小崩壊を起こしやすいようです。どの現場も急傾斜地をかかえ、よくこんな所で住んでいるなーと感心するばかりでした。不安であっても生まれ育ったところで最後まで生活したいと思うのが当たり前なのでしょう。皆さんの気持ちを大事にして対策工事をしていってほしい。
 また景観にも配慮しながら工事を進めています。白米千枚田は世界農業遺産にも指定され、棚田を守るためにも中間を通る国道249号は、ノルウェーで開発された発泡スチロールを重ね、その上に鉄板を乗せ整備したという驚きの道です。お金は何倍もかかりますが千枚田を守るためにと。合理的にわりきって工事をすれば簡単なことも自然を保つためにと考えながら進めて行くと時間もかかるし・・・。
 いつもの砂防堰堤とは異なった色々な現場を視察できてとても良かった。
 
道脇
 初めての能登方面での視察は素晴らしい天候に恵まれたのと、白山とは違った視察で大変良かったです。
 @ 石休場急傾斜地は本当に急傾斜地で、命綱をつけての作業には安全を祈らずにはいられませんでした。少ない住人のために4億もの大金を使って崩壊対策をするくらいなら、近くの安全な場所に移住してもらった方が良いのではと考えるのは住人の人達を無視した考えなんですよね。
 A 谷内川砂防事業は普段は小川みたいな川が土石流発生の恐れがあるための砂防事業。1号堰堤のWウォール堰堤は壁と壁の間に土砂を埋める。工期が短く、コンクリート堰堤より安いけど見た目が頑丈でないので、住民に不安があり人気がない?私はこちらの方が自然なので好きです。
 B 惣領地すべりはレーダー基地のための道路建設によっておきた。地すべりの原因となる水を抜くために深さ20〜35mの集水井が50基あるそうです。あまりの深さに階段を降りて作業する人は大変!
 C 千枚田ポケットパークの間の道路がノルウェーで開発された発泡スチロールを日本初で使ってあるのを見てびっくりした。せっかくの素晴らしい工事、鍵をかけないで、いろんな人に見せたい!日本の技術をもってすれば壊されない見学場所は作れるはず。
 D 川島急傾斜地はがけ崩れ対策が終了した箇所が急傾斜過ぎて、上の方の木が崩れてきそうな気がして怖かった。
 最近、雨が降るたびに日本各地で土砂災害が起こり、狭い日本では山や崖の下で生活する人が大勢いるので、気を付けないといけないですね。
 

 第7回活動は初めての奥能登砂防現場視察でした。
 まず最初に訪れたのは輪島市石休場急傾斜地地すべり対策工事でした。以前から小崩壊を繰り返していたため地元民から早急な対策が求められていました。固い岩盤まで2m余の杭を打ち込み型枠を組んでコンクリートを流し込む工事が行われていました。
 杉平町地内谷地川砂防事業は平成10年発生の台風により人家近くまで土砂が流出したため平成14年より整備工事が行われているものです。完成した1号堰堤のダブルウォール工法、3号堰堤のコンクリート工法を見学しました。晴天が続いていたこともあって谷内川の水量は驚くほど少ないものでしたが、ひとたびゲリラ豪雨に見舞われたなら多量の土砂が流出し甚大な被害が出るのだと災害の脅威を感じました。
 惣領町地すべり防止工事では巨大な水抜き井戸を見学しました。防衛省が山頂に軍事防衛用のレーダー基地を建設したことにより道路亀裂、山腹斜面崩壊が生じたものです。このような地すべり防止のための巨大な集水井戸が50基作られているそうです。
 つぎは世界農業遺産に認定されている「白米千枚田ポケットーパーク」に立ち寄りました。地すべり地帯でもある千枚田を横断する道路は地すべり防止の一翼を担いEPS工法というノルウェー発祥の発泡スチロールによる工法で盛り土されていました。保冷箱しか知らない発泡スチロールがこのような土木の分野で活躍しているのは大きな驚きでした。
 穴水町川島地内は四つの災害時要援護者施設が隣接し急傾斜地対策事業が行われているものです。崖高6m、勾配50°の覆い被さるような木々を見上げながら対策工事完了とは言え不安感が残りました。
 青い海に青い空、快適なドライブ日和に恵まれました。能登里山街道を走りながら、この美しい里山里海に災害が起きないよう願いながら家路につきました。
 
餅井
 先ず、最初の石休場の勾配40°もある施工中の現場の真下まで行きました。そこに建っている民家では、現在も人が住んでおられて、これからもお住まいは移動されないとのことでした。これまでは、いつがけ崩れが発生するのかわからないというのに、この土地に愛着を持って住んでおられたのですね。
 山腹崩壊で民家近くまで土石流がせまったという谷内川に設置計画されている1号から3号の堰堤工事の内の、3号流路工を見学しました。水の威力は計り知れないものだと思いました。
 惣領地すべり防止工の集水井工を見学しました。地すべりの発生は、地下水が原因との事で、防衛道路を造った為に地すべりが発生したとのことでした。この地下水を抜く集水井が全部で50基設置されているそうです。
 
山岸
 第7回活動では、特派員活動ではあまり馴染みのない石川県発注の工事現場を見学させていただきました。しかも活動開始以来初の奥能登地方の現場でした。企画していただいてありがとうございました。
実際に施工されていて、仕事の手を止めて見学させていただいたところもあり、恐縮しました。
 個人的に珍しかったのは、谷内川通常砂防事業のダブルウォール堰堤で暗渠付近は栗石が詰められたふとん篭?(質問し忘れたので実際はなんというものかは疑問ですが)が設置されていて、水のとおりを確保しつつ、その周辺部分は植生されふさふさに植物がはえていました。
 いつもコンクリート(2次製品含む)の堰堤を見慣れているせいか、とても新鮮でした。周囲の環境ともマッチしており、景観に配慮した施工に感心しました。しかし、石川県の職員の方々は、安心感を与えるのかコンクリートの堰堤の方が周辺住民の方々には好評だとおっしゃっていました。確かにコンクリートの堰堤の方が強度的には強いかもしれません。よかれと思って景観に配慮して施工していても、それが地域住民に受け入れられ、喜ばれるとは限らないということを知り、地域住民への説明会なども大切なのだとつくづく感じました。
 あと、軽量盛土工の道路工事などは結構周囲で施工されていますが、日本で初めて施工されたのが249号線だったというのには驚きました。
 お天気にも恵まれ、いつもと違う趣の現場を見学する事が出来、第7回活動もまた充実した活動になったと思います。
 どうもありがとうございました。