甚之助谷新5号堰堤は甚之助谷の最下流部に位置し、甚之助谷砂防堰堤群の基幹砂防堰堤として、上流側の河床堆積土砂の流下防止及び渓岸崩壊防止に寄与している。しかし、この甚之助谷新5号堰堤も徐々に傾きながら下流側へ移動しており、仮にこれが倒壊した場合には、上流側の甚之助谷砂防堰堤群が将棋倒しのような形となることが想定され、大量の河床堆積土砂が流下すると共に、河床低下により渓岸崩壊はもとより、甚之助谷地すべりの中間尾根ブロックのすべり面にまで河床が低下した場合には、地すべり土塊の急激な活動も懸念される。
また、甚之助谷と万才谷の合流点直下に位置する柳谷第3号砂防堰堤〜柳谷新第20号砂防堰堤間は、当初は両岸に岩盤が露出しており比較的安定していたが、昭和60年に右岸が、続いて平成4年には左岸が崩壊し、その後は施設下流側の河床低下と相まって、特に左岸側は未だに安定せず、斜面崩壊の恐れも大きい。さらにここは甚之助谷地すべりのブロック末端部に位置することから、移動土塊の応力が集中する場所であると推定されており、河床低下が進行した場合には両岸崩壊により地すべりの滑動を促進するおそれも高い。そのため、この区間は河床を安定させ、両岸の崩壊を抑えると共に、地すべり土塊の急激な滑動の抑制を図る必要性が高い場所である。