中学生の部 銅賞作品 「魚とりと自然について」 小平 俊光 佐久市立東中学校

 僕の趣味は魚とりです。山に住んでいるせいか自然とふれあう機会が多く、小さいころから川や山で遊んできました。そんな中でも魚とりは夏の楽しみです。
 去年の夏にもやはり駒込の川で魚とりをしました。休日になると友達もときどき来ていっしょに魚とりをしました。岩の下に手を入れるとなんだか動くものがあります。魚を見つけると、「いた!イワナだ!!」と自然に声が出て、それからイワナとの闘いが始まるのです。イワナは逃げれば勝ち、僕らは岩からひきずりだして入れ物の中に入れたら勝ち。イワナと僕らとの間でちょっとしたかけひきがあります。そのかけひきに僕らが勝つこともあればイワナが勝つこともあります。そんなかけひきも僕にとっては魚とりの楽しみの一つです。
 大きな岩の下に手を入れてみるとたくさんいたり、いつもより大きな魚がいたりします。たくさんいるときは一人でとろうとせずに数人で別の穴からも手を入れてみてとります。しかし、大きなイワナがいたときでは全く別です。絶対ほかの人にとられたくないので、なんとしても一人でつかまえます。時には大物を逃してしまうこともあります。でも逃げられたら、「次こそはつかまえるぞ。」という気持ちになります。見つけた魚が全部つかまえられるとは限りません。全部つかまえられたら楽しさも半減してしまうし悔しくもなんともなくなります。
 岩の下に手を入れると、ぬるぬるしていて少し気持ち悪いけど、つかまえられた時はとてもうれしい気持ちになります。
 また、川は魚をつかまえるだけが楽しいわけではありません。たしかに魚とりが一番楽しいけど、少し深いところで飛びこんで遊んだり泳いだり、中には潜るやつもいます。そしていっぱい遊んだらお腹がすきます。そんなとき、とってきたイワナを炭火やたき火で焼いて食べます。僕のオススメはイワナの塩焼きです。
  魚料理の中でも一番好きかもしれません。イワナをくしにさして塩をつけて焼きます。見た目はシンプルで塩の味しかしないように思えます。しかし、これがおいしいんです。イワナ本来の味に塩がぴったりあってとてもおいしいです。機会があったらぜひ食べてみてください。
 僕は去年何度も川に魚とりに行きました。その中でも最も印象的だった事についてお話したいと思います。
 その日、僕は兄と父と三人で川に入っていました。家の前の辺からだんだん上にのぼっていきました。途中まではほとんど見つからず少し退屈でした。しかし上流に行けば行くほど少しずつ魚が見えはじめました。
 二十センチメートルほどのイワナがほとんどでした。岩の下に手を入れると食べごろサイズの魚がいます。「これはいいな。」と思い岩から魚をつかみだします。ゆっくり上流へ歩きながら魚のいそうな岩の下に手を入れてみます。二十センチメートルくらいのイワナだと思えばなんとかつかまえます。
   ゆっくり歩いているうちに、魚のいそうな雰囲気の岩を見つけました。「ここは絶対いるぞ。」と思い、岩の下に手を入れてみてびっくりしました。なんとそこには今までつかまえていた魚とは比較にならないほどの大きさの魚がいるのです。不気味に思いつつ、手でさぐっていきました。それはまぎれもなく大イワナでした。いや、特大イワナでした。僕はなんとしてもこの特大イワナをつかまえようと水に半分沈みながら格闘しました。何分水につかっていたかわかりません。二匹いたうちの一匹を兄がつかまえました。僕はあみを用意してもらって残った一匹の頭をつかんでひきずりだしました。その日一番の巨大イワナでした。大きさはなんと四十三センチメートル、下あごがサケのように大きくなっていました。兄がとったのも三十六センチメートルと、とても大きなイワナでした。僕はこの日あらためて魚とりのおもしろさを実感しました。
 きっと今年の夏も魚とりをするでしょう。
 しかし、そんな楽しい魚とりがあと何年後かにはできなくなってしまうかもしれません。理由は環境汚染や森林伐採にあります。工場や家庭からの汚れは川河の水を汚染し、森や川の生き物の命をうばっていくのです。また森林伐採は動物たちの、住み家である森を奪ってすこしの雨で土砂くずれが起こり、川をうめてしまいます。これは魚にとっても人間にとっても命にかかわることです。しかし、魚には森林や川を守ることはできません。そんな生き物たちを守る義務が私たち人間にはあるはずです。一人の力ではどうにもなりませんが、日本中の人たちが協力すればきっと自然は救われるはずです。そうすればまた川で楽しい魚とりができるのです。
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