中学生の部 銅賞作品 「私と千曲川」 木原 多恵 飯山市立第一中学校

 私は小さいころから、あまり千曲川が好きではありませんでした。それは、千曲川がとても大きく、雨の季節になるとよどんだ水でいっぱいになるからでした。
 私は、雨のたくさん降った日の千曲川を見るのが嫌いでした。いつも大きな千曲川が、もっと大きくなり自分たちを車ごと飲み込んでしまうのでは、と考えていたからです。
 小さいころからずっと「千曲川は怖い」と考えていた私ですが、ある日少し考えが変わったときがありました。小学生のときです。授業で千曲川に行きました。そのときの千曲川は、雨が降り、水かさが大きくなって、やっと元に戻ったという様子でした。あちこちに大きい岩やゴミがありました。千曲川は川の水と一緒に、ゴミや岩まで運んできたのです。その時私は、怖いという気持ちよりもおどろきの気持ちでいっぱいでした。
「千曲川って怖いだけじゃないかもしれない。」
 その授業で千曲川が日本一長い川だということも知りました。
 しばらくたって、私は毎日、橋を渡って小学校へ登校することになりました。あの授業のときから、少し怖くなくなりましたが、毎日千曲川の上を歩くとなると・・・。私は友達につかまりながら、一緒に登校していました。
 そんな私でも、今は千曲川が大好きです。
 とても大きくて、長くて。頼もしい川だと思います。私がなぜこんなに考え方が変わったのか。それは、毎日怖がりながら、登校していたときです。いつもより帰りが遅くなってしまい、空はもう暗くなってきていました。そんな時の橋の上、千曲川の上は怖さ二倍。いつもより強く友達につかまっていました。
「まだ橋、終わらないの?怖いのに。」
 そう考えていたときです。千曲川の向こうから、何か流れてきました。しかも、ぼんやりと光っています。
「何?あれ。ひとだま?」
 そう言って、私と友達はその光る物体を見ていました。
 じっと、見ているうちに、だんだん数が多くなっていきます。少し怖くなりながらも見ていると、小さい船のようなものにろうそくが立ててあり、こちらに流れてくるのがわかりました。それに気付くと、千曲川はろうそくでいっぱいになっていました。ふと空を見ると、月がろうそくでいっぱいの千曲川に負けないぐらい輝いていました。あの日の千曲川は、本当にとてもきれいでした。
 こんなことがあってから、千曲川をよく見るようになりました。怖いと思っていた川の流れは、とてもおだやかででも、力強い感じがしました。それに、鳥もたくさん来ていました。それから、私の千曲川のイメージが変わっていきました。
 千曲川はすばらしい川だと思います。そんなすばらしい千曲川のある、この飯山に住んでいることができて嬉しく思います。そして千曲川が永遠に変わらぬ姿で流れていてくれるといいと思います。

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