中学生の部 銀賞作品 「川と蛍と私たち」 佐藤 玲実 信州大学教育学部附属長野中学校
「川」というのは、「水がたくさんある水路のこと」を言う。普段、私たちが使っている水は、飲料水用に消毒してあり、透明感にあふれている。しかし、私たちが生きていく上で、欠かせない水を供給してくれている川はどうだろうか。残念ながら、濁っている。ゴミをむやみに捨てたり、家庭や工業用の排水のため、汚染されているのだ。
 私は、つい最近、母からこんなことを聞いた。
「お母さんが子どもの頃は、家の裏の下水にも蛍がいたのよ。」
私は、とても驚いた。信じられなかった。私にとって蛍とは、希少価値のある貴重な生物だからである。ほとんど目にすることができない蛍を、母は何回も見ているのである。わざわざ遠くまで出かけなくては、蛍を見つけることができない現在とは違い、ほんの三十年程前までは、家の裏で見ることができたなんて・・・家の裏の下水は、今のようなコンクリートではなかったらしい。私は、その時思った。
“なぜ、昔は、そのような身近な場所に、蛍がいたのだろう。どうして、今は、見ることができなくなってしまったのだろう。”
 さっそく、私は調べてみた。すると、次のようなことが分かった。
「ホタルは幼虫の時、カワニナを餌として食べている。カワニナとは、水が透き通っていて、日光が深くまで射し込み、珪藻類が光合成を行い、繁殖できるようなきれいな川にいる。」
 幼虫の蛍は、カワニナを食糧としているのだ。そして、そのカワニナは、きれいな水にしか生きられない。つまり、蛍は、汚れていない、きれいな水がある所にのみ、生息できるのだ。ということは、蛍が減少してしまった理由は、蛍の住み処である「川」にあると言える。川に、ゴミを捨てたり、汚い水(排水)を流したりし続けてきた結果、水が汚くなり、今では、蛍が住めない川になってしまったのだ。つまり、私たち人間が、そういう環境に変えてしまったのだ。
 では、私たちは、これから何をしていかなければならないのだろう。それは、川をきれいにし、汚さないということだ。そのために、私たちができることは、むやみにゴミを捨てない、過大包装の物を購入しない、洗剤を使い過ぎない、などであろう。
 私たち人間がしてきたことで、川が汚れ、その結果、人間以外の生物にまで影響しているというこの現状。この事実を、私たちは、もっと深刻に受け止めなければいけない。川をきれいにするためには、一人一人の心がけが大切である。他の人が取り組んでくれれば自分一人だけならやらなくても大丈夫だろうなどと、卑怯な考えは一切捨てて、真剣に自然環境を守っていく姿勢が必要である。
 「自然を守る」などというのは、たいへん傲慢な考えなのかもしれない。100%自然を守るには、人類滅亡しか、道はないだろう。人間が生きていくということは、多少なりとも自然を破壊していくことに他ならないのだから。自然の恩寵を、常に感じつつ、その自然との共存の方法を探っていきたい。汚してしまったのは、私たち自身なのだから・・・。
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