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阿賀川について

阿賀川の歴史-阿賀川と河川伝統技術-

講演録:住民参加の町づくり ~会津若松市民の水環境意識を中心に~

会津大学理工学部 教授  佐々木 篤信

※ 本講演録は平成13年12月21日開催の第5回阿賀川河川伝統技術検討懇談会で佐々木氏が講演された内容をとりまとめたものである。

1.はじめに

 会津若松市では、平成10年春に市民意識調査を行っており、それに私もたまたま関わっていました。ここでは、その調査データの中から水環境に関係する項目を中心として、会津若松市民に意識された当市の水環境の特徴と課題について考えてみたいと思います。

 また同時に、21世紀のまちづくりを考えていく上で、どうしても欠かせない住民参加、あるいは市民参加の新しい可能性というものが、その意識調査の中に出ているかどうかということについても考えてみたいと思います。

 それからもう一つ、市の調査とは別に居住の場での実際の取り組みについて紹介をします。自治会、町内会の自主的な取り組みについて、具体的な事例に則して検討を行います。つまり、私自身の身近な生活居住の場の様々な動きと、市全体レベルでの市民意識の問題とを、市民参加あるいは住民参加のまちづくりという観点で組み合わせて考えていきたいと思います。

 この町内会とは私の団地のことであり、私が入った当時は市内の一新興団地でしたが、既に20年が経ちました。そこで、今年10月に行われた創立20周年の記念事業がどのような形で行われたのかということについても紹介したいと思います。

 上記2つの領域(市の行政レベルと市民の居住生活のレベル)は今、安心して自分の将来を託すことのできる地域社会を形成するために、双方の新たな共有領域を探り広げようとしているように見えます。行政の単位としての自治体と一人の人間の生活で最も身近な町内会や自治会レベルの問題、その両者をつなぎ合わせる共有領域というものを様々な角度から検討し、行政の側からも住民の側からもこの領域にどんな新しい課題が生じており、その問題を解決するためにどんな対応を住民側がしていく必要があるのかを考えます。この共有領域を広げていくためには、行政のシステムが市民の多様な力を引き出し、組み合わせていくような方向へと変身を遂げなければなりません。と同時に、住民の基礎組織とその担い手が、自己の世界を意識し高めつつ横のつながり、公共の領域への関わりとその力量を蓄えることが求められていると考えます。

 ここでは、新たな公共性領域の実際の動きとして市民意識調査の結果と自治会での取り組みの両極を考えていこうと思います。21世紀日本の安心できる地域社会というのは、この市民意識と感性に支えられた多様な参加のあり方をそれぞれの地域課題の特徴にあわせて探る中から出てくるのではないかと思います。誰もが自然に、自分の生活の一部を関心と必要性・可能性に配慮しつつこの領域に振り向けること、それが特別のことではなく、日常的となるような状態が作り上げられていったときに、新たな地域のあり方というものは、持続可能な形で私たちの身近なところに広げられていくことになります。

 同じような問題意識は、二年前に発表した研究年報にも出しており、地域づくりと公共性のなかでも触れています。

 『ここでは、団地形成後10数年を経て成熟期を迎えた一自治会がこの一年間に取り組んだ事業の検討を通して、今日における地域づくりの課題と新たな可能性を探ることにする。自治会役員会が、安心して生活できる居住地域に向けて具体的な課題に意識的に取り組んだとき、それがどう行政と関わり、どのような成果や新たな課題を生み出し、地域社会を自らが担い変えていく対象として取り戻すものとなりえるのかが見えてくる。それは、政治・行政と住民・地域組織との従来のあり方を根本から見直し、どうすれば安心と福祉主導型の地域づくりができるか、住民自治と共同の多様な能力を居住の地に蓄積していけるかを問うものである。今、生活の不安と危機の中で住民自身が地域社会の担い手に成長するための環境づくりを経験しつつある。』(「地域づくりと公共性-自治会による調査を中心に-」佐々木 篤信:会津大学文化研究センター研究年報 第5号1999年3月発行)

 ここからは、先ほど説明したように2つの大きい領域を考えながら話をまとめていきたいと思います。

2.市民意識調査の結果から

 最初の領域というのは、平成10年に行った市民意識調査の内容を紹介します。この市民意識調査は3,500人の市民を対象に行い、その内1,790ケースが回収され、改修率51%とかなり高い回収を得ています。この結果については、その年の暮れの市政だよりにも紹介されました。

 回収された1,790人の構成率を見ると、男性よりも女性の方が多く、年齢は60代をピークに上下に下がっていく構成となっています(図-1)。

 また、この調査は、地域ごとの特徴を見るために、無作為の抽出ではなく、永和、松長などの地域では配布割合を少し多くして、50ケースぐらいは回収できるようにしてあります。したがって、全体についてのデータでいうと、若干農村地域の方に厚い形で結果が出てきていると思います(図-2)。

 会津若松市の住みごごちについて聞いたところ、「大変住みよい」と「まあ住みよい」を合わせると、45.3%の人が住みよいと感じていました。一方、「やや住みにくい」と「非常に住みにくい」を合わせると17%ぐらいになっていました。

 現在の居住地区が機能的にどのようなところが中心になっているかを聞いたところ、住宅地と答えている人が圧倒的に多く、次に農林業と商店街が多くなっていました。

図-1 年齢

図-1 年齢

図-2 居住地区

図-2 居住地区

a)下水道整備

 次に、下水道の整備について聞いたところ、3人に1人が普通、2割強の人が良いと答え、不満に感じている人が4割近くいることがわかりました(図-3a)。この結果を回答者の職業別に見た場合、農林水産業の仕事をしている方が他に比べると非常に高い割合で下水道の整備について不満を持っていることがわかります。つまり、ここから予測されることは、農村地域ではまだ下水道が整備されていないところがあるということだと思います。

 同様に下水道の整備について、今住んでいるところがどのような働き・機能の場であるかということをクロスさせてみると、ここでも、自分の住んでいるところが農林業中心だという人の多くが悪いと意識しており、約7割に及びます(図-3b)。このことから、中心部以外の所では、まだ下水道に対する不満を持っている人がかなりいるということが分かります。また、同じ下水道のことを小学校の学区別に見た場合、城西や永和、神指、門田、城南、大戸、湊で、6~7割と非常に高い割合で悪いと答えています(図-3c)。つまり、会津若松市の下水道整備については、中心部の方は比較的良く整備されているが、周辺部の農村などにおいては依然として残されているところが多く、それに対する意識が現れているというふうに言えます。

 同じように下水道整備と会津若松の住みごこちに関してクロスさせてみると、下水道整備が悪いという印象を持っている人では、すみよいという人は少なく、住みにくいというところで高い割合になる傾向を示しています(図-3d)。

図-3a 下水道整備(1)

図-3a 下水道整備(1)

図-3b 下水道整備(2)

図-3b 下水道整備(2)

図-3c 下水道整備(3)

図-3c 下水道整備(3)

図-3d 下水道整備(4)

図-3d 下水道整備(4)

b)河川の環境

 次に、河川の環境について市民はどのように感じているのかを聞いたところ、普通と答えている人が全体の約5割、悪いというイメージを持っている人が3人に1人ということで、良いと評価している人は1割弱ということです。これを、職業別に見た場合、あまり特徴はなく、どんな職業・仕事に就くかということと、河川の環境ということとは直接の関係は見えてこきませんでした。また、職業ではなく住宅の機能とクロスさせた場合、企業や事務所が多いところで、河川環境が良くないと思っている人は46.2%おり、農林業中心の所でも、4割を超えた値が示されています。

 同様に、学校区域ごとに見た場合、河川環境に対するマイナスのイメージが強いところは、永和地区で64.4%、次いで城北51.1%、神指47.3%となっています(図-4)。これら4~5割を占めるような地域をつなぎ合わせると、一つの傾向があり、上流から下流へという問題が出てきます。この上流から下流というのは、会津若松市の地理的な条件で考えると、東から西に、南から北に低くなって川が流れており、東山地区というのは一番高いところにあるので悪いという印象は非常に少なく、一箕地区で平均並み、松長地区は非常に低い2割弱になっています。あと、謹教や鶴城、行仁あたりもそう高くはありません。しかし、下流の方にいったところで、数値がドンとあがります。この辺りは、下水道工事の進捗とも関連させてみなければいけないところだと思います。

 上流と下流の関係の問題は以前からあったことです。今から20年ぐらい前にも市民調査をやったことがあり、その時はもっと大きな格差があって、市内の北西側の地域はいずれも非常に高いパーセントで川の汚れとか悪臭があるというような答えが返ってきていました。それは、みごとに東から西へ、南から北へいうようなものであり、明らかに意識の中にマイナスイメージというものが映し出されていました。それに比べると、今回はかなり少なくなったというふうに見ていますが、それでも依然として上流と下流の関係の問題、下水道の問題を抱えています。

 ここから、これらの問題についてどういう対策を考えていくべきかというテーマ・課題を読みとれるのではないかと思います。また、より客観的には実際に汚染度を計測すれば、意識の問題と重なった結果が出てくるのではないかと思います。

 また、河川環境と会津若松市の住みごこちについてクロスさせた場合、河川環境が悪いという点において高い割合を示しているのは、住みにくいと感じている人だという傾向が出ていました。

図-4 河川の環境

図-4 河川の環境

c)快適な市民生活

 次に、快適な市民生活に最も必要なものは何かという設問を取り上げます(図-5)。この調査は3年前に行ったわけですが、福祉、保健、医療関係の項目はいずれも非常に高い割合で反応が返ってきています。ご承知のとおり、福祉の領域や介護の問題というのは高齢化社会と関連しており、介護に関してはそれに関係する制度もできましたが、その制度ができる前の段階からすでに、非常に強い関心があったことがこのデータからわかります。

 また、会津若松市内では、以前から道路の問題が高い関心を集めていました。特に冬期間の雪の道路、除雪の問題や城下町独特の複雑な道路の流れ、車の普及など非常に不満の高い項目として上がっています。あと、環境衛生についても2割という形になっています。

 次に、居住地区の快適環境化重点施策としてどのようなことがあるかと聞いた場合、先ほど言った除雪体制、除雪の問題に対する苦情が非常に高いということが分かります。また、道路に対する問題も意識が高く、下水道の整備についてもかなり高いところに位置していることが分かります(図-6)。あと、今回の内容に関係する河川の美化、清掃ということも2割弱の人が関心を持っていることが分かります。これは、河川の問題について、市民が他の項目と比較してどんな関心を向けているかということの1つの指標になると思います。

 また、働きとしての将来の居住地区、自分の住んでいる地域が将来どんなふうになったらよいかということを聞いたところ、住宅の周辺環境が整備されることを圧倒的多数の約4割の方が望んでいました。この中には、緑の問題や公園の問題など、様々なことが入るかもしれません。

 さらに、雰囲気としての将来の居住地区について聞いたところ、一番関心が向けられているのは、ふれあいであり、次に閑静で落ち着きのある町、自然の中に躍動感が感じられる居住地区、四番目に山や川の自然環境となりました(図-7)。やはり自然の身近なところでの居住ということを望む声がふれあい、あるいは閑静ということと並んで関心の高い内容になっているということがわかるかと思います。

 また、市の取り組みが遅れた分野というものにどのようなものがあるかという設問で一番高かったのが福祉の充実の問題、そして町の中心部の空き店舗対策。あちこちに歯が抜けたような状態で空き場所ができ、そこが駐車場になっていくような動き、何とかならないだろうかという不安が表れています。それから、市街地内の道路整備、下水道の排水問題、あと環状道路の整備と並んでいます。取り組みが遅れた分野ということで行政に対する住民のニーズの集まり具合というものが分かると思います。

 これを地域別に見ると、それぞれの地域における関心の領域と苦情の領域というものが読みとれます。例えば、城南地区では、社会福祉の充実ということに対して38.6%と非常に高い関心を示しており、城北地区では空き店舗対策などということに3人に1人が関心を向けているということが特徴としてわかります。

 次に、今後5年間の市の重点施策として何が考えられるかと聞いたところ、ここでも非常に高い割合で高齢化・公的介護保険制度という回答が得られました。続いて、道路問題についての渋滞解消や中心市街地の活性化、駅の西地区の開発整備、自然・環境保全ということでした。川のことは直接項目として上がってはいませんが、自然・環境保全というところに入るかと思っています。

 また、今後5年間の市の重点施策として何が望まれるかということを男女別に見てみると、女性の方が、高齢化・公的介護保険制度に対する関心が非常に高く33.6%であり、これは高齢化社会の介護問題は女性の仕事というふうに感じ、そのことに対する対応を早くしてくれということがそこに表れていると思います(図-8)。

 さらに、これを地域別に見ると、その地域の特徴がよく表れています(図-9)。行政的な対応としては、それぞれの地域に出向いていってどんな具体的な課題を意識しているかということを確認し、地域の人たちの話を聞きながら、地域の計画を立てる、行政はそういう方向に向かって今変わりつつあります。地区計画は市がつくるのではなく、その地域の住民が考えていく、行政に対して要望を出していく、そういう機会をつくるということに全国的に変わってきています。

図-5 快適な市民生活に最も必要なもの

図-5 快適な市民生活に最も必要なもの

図-6 居住地区の快適環境化重点施策

図-6 居住地区の快適環境化重点施策

図-7 雰囲気としての将来の居住地区

図-7 雰囲気としての将来の居住地区

図-8 今後5年間の市の重点施策(性別)

図-8 今後5年間の市の重点施策(性別)

図-9 今後5年間の市の重点施策(地域別)

図-9 今後5年間の市の重点施策(地域別)

d)2つの領域

 次に紹介するのは、この調査の1つの特徴である、自治体の行政の領域と私的な居住地域の住民の課題と、その両者の接点や境界領域というものがどのように意識されているかということを調べようとしたものです。

 図-10は、家の前の通りの緑の手入れやごみ清掃に関する項目についての設問です。国道の近くの方は危険でとんでもないという話になるでしょうし、農村地域の方ではそんなことは当たり前だというふうになるかもしれません。また、住宅地の場合にどんな反応があるか、地域によって色々違うだろうと思います。一番上のところは住民と行政が協議しつつ、それぞれが役割を分担してその仕事に対処していったらよいと答えた人であり、4割の人がそう答えています。2番目に多いのは、住民の話し合いで自ら解決したらよいという答えであり、3番目は、行政とよく協議しながら、しかし、住民が中心になって解決した方がよいという答えでした。行政が中心となってという答えは4番目になっています。

 次に、図-11はもう少し離れたところの公的なニュアンスの強い領域を入れた、地域の公園や広場の緑の手入れやごみ清掃についての結果です。これも先ほどと同じように一番多いのは、行政と住民が協議をしながらそれぞれの役割分担をして対応するということであり、4割を超えています。2番目は、住民と行政が協議しながら、しかし住民が中心になって解決する。3番目は、同じように協議をしながら、行政が中心となって解決するということです。

 これらの結果より、この役割分担というのが1つの考え方として意識の中で高い位置を占めるようになってきているということがわかります。

 もう少し公的なニュアンスの強いものとして、地区の近くに小公園や遊び場をつくり管理する場合について質問したところ、ここでもやはり同じように、協議をしながらそれぞれの役割分担でというのが42%と多くなっていました。その次に多かったのは、住民と行政が協議しながら住民が中心になってということであり、小さな公園をつくることや管理すること、遊び場をつくることや管理することまでは役割分担してもよいというふうに答えているということです。

 さらにもっと身近な問題として、お年寄りや障害を持つ人の家の雪下ろしや除雪について質問しました。これは、もう既に制度として始まっており、若松市内では冬期間に除雪のボランティアというのがあるし、フォーマルな形で市から委託された組織が機能しています。

 住民と行政が協議しながら役割分担して決めていくという人は3割であり、先の3つの設問に比べるとかなり低い割合となっていました。また、これまでは住民が中心となって協議をしながら解決するというのが2番目でしたが、この項目に関しては行政がしっかりしなさいという形で、行政が中心となってというのが2番目になっています。

 これらの調査結果は、市民と行政とが具体的な地域の生活問題や課題について協議をすることの必要性や重要性などについて示していると思います。どのような問題について協議をする必要があるかということはケースバイケースで、行政の方に中心が置かれる場合、住民の方に中心が置かれる場合があるが、全体としてみると役割分担するような形で考える余地があるというような反応になっています。

 次に、各地区での行政との話し合いの場に参加する気があるかどうか聞いたところ、特に関心がある問題ならば参加してもよいと答えた人が47.8%とかなり高く、積極的に参加し、地域活動に自らも関わっていくというふうに答えた人は27.7%、参加しないという人は非常に少なかったです(図-12)。この結果を見ると、行政側で提起する話し合いの場合に参加するかどうかというふうに設問ができあがっており、市民の側からすると、自分に関係のないものは出る気はないというようにちょっと距離を置いている感じがあるかと思います。

 この結果を地区別に見た場合、行仁や城北地区では53%前後の人が関心のあるものについては参加するという考え方でした。また、積極的に参加して地域活動に活かすと答えた人は、永和地区で4割を超えており、その他にも大戸や湊という農山村地域の所で非常に強い参加意識を持っているということが表れています。

 以上のようなことで、大まかな市民意識、そして川の問題や下水の問題を中心とした市民の今の傾向、特徴というようなことが表れていたと思います。

図-10 家の前の通りの緑の手入れやごみ清掃

図-10 家の前の通りの緑の手入れやごみ清掃

図-11 地区の公園・広場の緑の手入れやごみ清掃

図-11 地区の公園・広場の緑の手入れやごみ清掃

図-12 各地区での行政との話し合いの場に参加するか

図-12 各地区での行政との話し合いの場に参加するか

3.自治会20周年の記録

 次に、私が住んでいる地域の中の問題を取り上げます。地域の中でのある会議の時に、私たちの団地の中に水を引くことができないかという話になりました。図-13は、私たちの団地の中の水の流れを示しており、右側の方が飯盛山、左側の方が平安閣の方、下の方が東山の方になります。

 この水は基本的にいずれも水田地域に向かって流れており、昔はこの辺り一帯を流れていたと思いますが、現在は住宅ができたのでここに示しているところのみ流れています。私たちの団地の中には水が一切入らないようにできあがっており、団地内に水を流すことができないかというのが団地の人の要望でした。

 そこで、団地のところに実際に水が引けるかどうか調べました。雨水については、川の水が流れないように全部ストップされており、団地をつくるときに田んぼは残すけれども、住宅の中に水を流すというふうには全然考えていなかったということが分かりました。

 また、図を見ると、右側の飯盛山の方から流れてきた水が急に曲がっているところがあります。ここは、かなり急な傾斜になっており、上から流れてきたごみや捨てられたごみが詰まるという状態になっていました。つまり、私たちが住んでいる団地の川の問題は、このごみ清掃の問題と絡み合って提起されていました。

 ごみを捨てる人、上流で流す人、草を流す人、切った木を流す人、どんどんここに詰まります。ここにたまったゴミは上流の人が取り除いてくれというような苦情があり、団地の中でも上流と下流の間で緊張関係がありました。

 上流と下流の問題というものは、団地のような所での上流と下流の問題が、重ね合わさった形で拡大して、市全体の上流・下流の問題につながっていくのだということを感じました。このことに関しては、もう少し広域で代表者が集まって話をすべきだということになっており、来年の春には関連する町内会長が集まり話をすることになっています。

 次に、団地内の地域づくりの問題と関係して、団地創立20周年記念事業というものをやるかどうかということでアンケートを行った結果を示します。

 記念事業に対する関心が大いにありというのは2割弱であり、ややありというのを合わせても4割ちょっとです。また、あまり関心がないというのが27%、全く関心なしを合わせると約4割となり、少しがっかりしました(図-14)。

 もし祝賀会を行うとした場合、どのようなものにしたらよいかと聞いたところ、誰もが気軽に参加できるものというのが圧倒的に多く約7割、しかし、25%の人はしない方がよいということでした。私の団地は84世帯ですので、かなりの人がやらない方がいいというような反応を示していることが分かります。

 記念誌を発行するかどうかについては、もっと支持が低くなっており、発行しない方がよいという人が3割でした。また、形式を整えたものをするならばという人が13%でした。

 全体としての記念事業について賛否を聞いたところ、賛成と答えてくれた人は4割強、どちらとも言えないと微妙に濁している人が4割、はっきり反対と答えた人は2割弱いました(図-15)。

 これらのアンケート結果をもとに役員会では開催するという結論を出しました。このアンケートは昨年の7月頃行っており、1年かけて今年の10月にこの祝賀会をやることになりました。

 資料-1は、アンケートの結果についてまとめたものです。アンケート結果は自由回答も含めて、かなり慎重に考えなければならないということで、全体としては(1)事業実施の方向で準備に取りかかるということ。(1)番目に、創立記念事業の目的をはっきりさせようということで確認しており、(3)番目に、事業内容として祝賀会と記念誌の2つをやるということ。(4)誰でもが参加できて慎ましい形で、しかし心がこもった事業にしていく。⑤事業の主催機関を自治会ではなく実行委員会とすること。(5)実行委員会の構成については、女性や若手の参加も意識して考える必要があるということ。最後に(6)第1回実行委員会の開催日程について記しています。第1回実行委員会は昨年の9月に開いており、ちょうど1年後の今年の10月にこの祝賀会が行われました。

 資料-2は、20年誌の抜粋です。表紙にある上段の写真は現在の団地の姿であり、下段は20年前の団地の姿です。上の方は木がいっぱい生えており、住宅がいっぱいになっています。ほとんど9割方が満杯になっており、住宅地として整然と整備されています。

 記念誌は巻頭言から始まっており、歴代自治会長や自治会員の方の一言集、写真集などが収められています。私も8代目の会長として[目に見えない財産への気付き]と題して書いております。

 『自治会長の仕事は、正面から取り組めば際限なく増え、仕事持ちをこれはとてもできそうもないと重い気持ちにさせる。除雪のような待ったなしで対応が求められる領域がある。環境美化・資源問題・福祉ボランティアといった役割・境界の定かでない極めて重要な新たな地域課題もある。幸いにもこの団地には、会員一人ひとり・役員相互に何ができるか・しなければの心、目に見えない誇るべきネット・蓄積・財産がある。自治会長に期待される仕事の中核は、このきずなを信じ、団地の宝物としてこれを確認・継承・育むことなのでは。「持っている幸せは見えない(俵 萌子)」』(飯盛第三団地創立20周年記念誌「二十年のあゆみ」p.9より)

 祝賀会当日は、市長や全体の自治会の連合会長などかなりの人が集まりました。この祝賀会の時に記念誌が配られ、よくここまでできた。自らもよくがんばったという感じでした。

 20年に1回の行事でした。次は30年にやるか40年にやるか分かりませんが、1つの区切りを自治会としてつけたということになるかと思います。

図-13 団地内の水の流れ

図-13 団地内の水の流れ

図-14 団地創立20周年記念事業への関心

図-14 団地創立20周年記念事業への関心

図-15 記念事業に賛成・反対

図-15 記念事業に賛成・反対

4.おわりに

 これまで、水の問題を中心に、そして住民参加の町づくりということで進めてきたわけですが、市全体の市民の意識の中にも行政と住民とが一体となって協議しながらことを進めていくということの重要性が意識として出てきておりました。また、私の団地の中でもやろうと思えば、足を踏み出せば、色々な形で新しい動きが可能であるということも見えてきたような感じがしています。

 21世紀の地域づくりというのは、そこで生活している人自身が自分の発想や創意を生かしながら、工夫をしながら参加していくものであり、その参加は行政に参加するのではなく、自分の地域を自分たちがつくっていく、支えていく。当たり前のことではあるが、その状態を新しい市民意識を基にしながらどのようにつくっていくかということではないかと思う。

 一人ひとり違った世界観や価値観を持っている。そのことを前提にして、なおかつ、繋がり合うためどんな工夫が必要であるか、従来と比べて何倍もの工夫をしていく必要があると思う。そのようなことに意識をしながら会津若松市内のそれぞれの町内会が取り組みを重ねていくことにより、従来とは違った意味での「住んでいてよかった」という地域にしていくことが可能なのではないかと思う。

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